少年ジャンプ+に受賞作掲載

「だから大丈夫と睨んだ。」ぼくくぼ
あらすじ
幼い頃から、よく騙される「私」は、大人の言葉や、行動に疑問だらけ。でも、なかなか口に出して、抗議をすることは出来なかった。不満と疑問を抱えながら成長し、高校を卒業して東京の大学で一人暮らしをすることになるのだが……!?
編集部講評
自分の意見を出すことに、遠慮がある主人公の、生きにくさや、悩む様、感情の揺れ動きを、丁寧にリアルに描き出している作品。キャラクターの情念が込められた、線・表情が素晴らしいです。全体の画面構成や視線誘導、不安定な線、セリフ量の多さなど、まだまだ改善点はあるので、作品を重ねながら、成長していってください。次回作を楽しみにしております。
田中靖規先生講評
絵が上手く、背景にも手を抜かず描き込まれた画面から良いムードが漂っていました。ただ人物の作画について、リアルで不気味な大人の笑顔などはよかったものの、キャラクターのノーマル顔、リアル顔、デフォルメ顔の差が激しすぎて、同じキャラクターに見えない所がありました(特に主人公)。主人公の顔は漫画のテイストを決める大事な部分です。読み切りの限られたページの中で頻繁に顔のタッチに差があると、ギャグなのかシリアスなのかホラーなのか、漫画のテイストがつかみにくく、読者がこの作品をどう読めば良いのかを理解するのに時間がかかってしまう危険があります。画力はあるので、そんなにタッチに差をつけずとも色んな表情を描き分けられるはずです。キャラクターデザインにおいて、ノーマル状態の顔の描き方を安定させることで漫画全体のテイストを調整できれば、もっと読みやすくなります。また、主人公がせっかくいろんな嫌な体験をしているのに、回想のモノローグでの過去の振り返りになっているため、『今』現在の主人公が問題に直面してどうなるのかを描くドラマ構成になっていないのが勿体無いです。上京してからは回想ナレーションをなくして、現在進行形の構成(心の声のモノローグはアリ)にすると、読者をもっと主人公に感情移入させ、物語に引き込めるように思います。

「サボのトゲ」橋本純
あらすじ
13年前、サボテンの子供が生まれた。ひっそり施設で暮らしていたが、その存在が政府に知られてしまい…。
編集部講評
サボとリト、どちらも魅力的なキャラクターで、サボテンというモチーフも素直に活かされていました。特殊な設定とキャラだからこそ、情報を伝える絵作りを意識できるとさらに良くなるはずです。演出や構図のかっこよさは今後も武器になるので、読み手にしっかり伝わる見せ方を意識してみてください。仕上げが丁寧だった点も好印象でした。次回作も楽しみにしています。
田中靖規先生講評
会話のシーンが連続しますが、演出力(レイアウトやキャラの演技の多彩さ)があり、飽きずに読めました。ただ、サボテン男の存在はかなりファンタジーレベルが高いため、世界観や登場人物の行動原理を納得できる範疇に収め、絵の面でも、そのシーンで誰が何をして何が起きているのかを丁寧にわかりやすく描く力が必要です。読者の頭に「?」を少しでも浮かばせた時点で、気持ちを離してしまうからです。 その点で、主人公やサボの描写は丁寧で、いい関係性が描けていました。しかし、サボが巨大化するp28~30では、何が起きたのか伝わりにくい絵と演出になってしまっているのは勿体ないところです。また、世間がサボを悪魔のように恐れる中、常識ある『大人』のおばあちゃんがサボを愛し、大切にする理由が特に描写されていない(そもそもこのおばあちゃんの施設は孤児院なのか何なのかもわからなかった)のが、世界観の根幹に関わる前提部分なので気になりました。ただの善人、で済ますにはサボの存在が特異すぎます。はっきりとおばあちゃんには動機があるはずなので、ほんの1コマだけでもいいので軽く触れる描写が欲しかったです。主人公だけでなく、脇役の行動原理もきちんと共感できるように描くことで、物語にスムーズに入っていける読者をもっと増やせます。

「また会う日まで堕天」にしのり
あらすじ
追放された天使・サキエル。ホームシックのさなか、孤独な少女ココロと暮らすうちに、心に変化が芽生えはじめ…。
編集部講評
オーソドックスなモチーフながら、自身の作品にうまく取り込めており、物語としてのまとまりが感じられました。主人公の成長や心の変化が明確で、しっかりとしたフリとオチが好印象です。一方で、描線の不安定さが目立ちました。頭身のバランスや小物のサイズ感、背景など細部にも気を配ると画面の説得力が増します。表情もより豊かに動かせると、キャラクターの魅力が一層引き立つはずです。次回作を期待しています。
田中靖規先生講評
少女の生活ぶりが寓話的でややリアリティに欠けるものの、読み切りとして割り切れる範囲内です。冒頭から主人公の「帰りたい」という目的が提示され、それが物語の推進力となりスイスイ読むことができました。読みやすいということは、物語が読者に伝わりやすいという意味で、素晴らしいポイントです。主人公の独善的な性格による行動原理にも無理がなく、物語の展開に集中できます。少女との出会いにより主人公が成長し、「帰らない」という冒頭と正反対の選択を取るというオチも、フリが効いている分だけ心に残りました。漫画としての完成度が一番高かったです。ただ、背景の絵は雑に感じたので、もう少し丁寧に描く心配りができればなお良しです。

「smotherium」あらいゆうな
あらすじ
事故で強く頭を打った少年は、目を覚ますと魚の様な生き物が視えるようになった。その正体は…?
編集部講評
独創的な世界観を魅力的に見せられており、絵作りの感性に光るものを感じます。ただ、抽象的なセリフが多く、結末も読者の想像にゆだねるような形になってしまっており、ストーリーを明確に伝えきれていないのが残念でした。読者にどのような感情になってほしいのか、コマ、セリフごとに狙いを定めて作品を作ってみてください。
田中靖規先生講評
独特の絵柄にセンスを感じます。短いページ数なので、要素を省いてキャラクターの心情にフォーカスしたのは正しい判断です。しかし、「見えないものが見える僕はいなくなったほうがいいのかな」という心の動きはやや唐突に感じました。心情にピントを合わせたのなら、その導線の途中で読者に置いてけぼりをくらわせるのは勿体無いです。後ろ向きなキャラがわかるフリの描写が冒頭にあれば、より読みやすく、描きたいことも読者に伝わるはずです。あとはオチについて、こういった無常感漂う終わり方もアリですが、せっかく漫画を読んでもらうのならば、読者の心になにかひとつでも残したいものです。いなくなったほうがいいと思っていた主人公が、自殺しようとする人を助けたのはなぜなのか?主人公の心がどう動いたのかの描写がわかりにくく、読者の想像に任せすぎかも知れません。フリがフリのままで終わるオチだと思われたら勿体無いです。ラストの主人公の心情の動きをもっときちんと描けば、より読者の心に『残せる』漫画になります。

「最高のキス」顔屋フマ
あらすじ
美しく聡明な彼女に「ファーストキスは最高の一回にしたい」と言われ、最高のデートを計画する井崎くんだったが…
編集部講評
メイン2人のギャップが印象的で、自然と惹かれる魅力がありました。主人公の不器用ながらも誠実な一面も丁寧に伝わってきて、感情移入しながら読み進めることができました。読者の期待に応えることと、予想を裏切ること、どちらもできています。イケメン属性を引き立てるには、線の精度やデザインの設計にもう少し工夫があるとさらに映えると思います。次回作も楽しみにしています。
田中靖規先生講評
シュールな世界観がクセになる作品。既存の作品の影響を感じましたが、それ自体はまったく悪いことではありません。しかし、丁寧に模倣しすぎているように思います。丁寧がゆえに画面から受ける印象が低体温というか、地味に感じてしまいました(いい意味で低体温ならば作風として持ち味になり得ますが)。キャラの表情が全員単調なのもその一因で、特に終盤でヒロインが大笑いするシーンなどは、せっかく彼女の違った表情を読者に見せられるチャンスなのですから、もっと大きいコマで演出してほしかったです。その後、大好きだよ!と言われた主人公のリアクションや表情も、読者としてはもっと大きなコマでちゃんと見たかったところ。最高のキスと題しているわけですから、それがいかなるものかを読者は期待して読むので、キスシーンやその前後の演出はもっと突き抜けて、読者の期待には120%で応えてあげてほしいです。キャラの感情の見せ方にもう少し起伏があれば、もっと読者の心に刺すことができるはずです。

「無限刀」鮫縞千
あらすじ
かつて多くの血が流れた合戦場。そこに残された刀たちは、人々の願いに応えて能力を発揮する「無限刀」となった。
編集部講評
絵作りへの意識が高く、カッコいいシーンを描こうというこだわりを感じる作品でした。見せ場で主人公の顔が下を向いていたり、読者の目が止まらないのが惜しい点です。画力を向上させ、構図の引き出しを増やし、より魅力的なアクションを描けるよう努力してみましょう。
田中靖規先生講評
刀の設定など、連載を見越したアイデアを盛り込むのは好印象です。アクションシーンが続きますが、せっかくの見せ場で主人公の顔が下を向いている箇所が多いのが勿体無いです。見栄を切るシーンはバトル漫画の一番の見せ所なので、キャラの表情は読者にはっきりと見せるように描いたほうが効果的です。また読み切りということを考えると、展開やドラマが多いかもしれません。特に回想シーンが長すぎるのが気になりました。よく知らない人の過去に興味は持ちづらいものです。読み切りでは読者は主人公と初めましての状態なので、回想は入れてもワンシーンで、『今』起きていることのみでキャラを描き切る方が、かえって魅力が伝わります。省けそうな台詞やエピソードを整理し、もう少し短くまとめる(溢れるアイデアをカットして研ぎ澄ます)ほうが、アクションや台詞の良さがより際立つはずです。p35の「日々真面目に生きているな」はいい台詞。真面目な敵役は面白いので、もっとここを膨らましてキャラ立てできそうです。
- 「あの子は多分ウチュウジン」山葵
- 「USSASSIN」鬼灯村京
- 「放たれたモルモット」臼巻
- 「くじらのバド」伊藤七海
- 「涙と鼻水と闇の力」西原友作
- 「ほどくあなた」榎本さくひと
- 「天の史録」紀翠一柊
- 「バイオスフィア」跡辺プラム
- 「健太2号」一ノ瀬躍
- 「ガラクタデイズ」岩下だんご
- 「お返し」樋笠うみ


今回もたくさんの投稿ありがとうございます!全体として読むのにストレスを感じるような設定過剰さや、読みにくさはなく技量の水準は高いように思います。ただ、もう少し読者を驚かせてやろうとか、見たこと無いものを見せようとか、新しい試みをしてやろうという冒険心がほしいなと感じました。マンガは急速に発展していて、毎日たくさんの作品が発表されています。他の人には描けないものを読者に届けるために、今描ける精一杯にプラスして、もうひとつ高いところへ飛んでみようというチャレンジを入れてみてほしいです。なにか、一つ、「お!」と読者に思わせるだけで作品の評価は大きく変わります。また、思い切って飛んだその高さが、次作でも自分の力を引き上げてくれると思います。次の作品を楽しみにお待ちしています。
ジャンルが偏ることもなく、様々なテイストの作品が集まり、読んでいて楽しかったです。どの作品にも、作者に描きたいシーンや感情があり、そこに向けてペンを走らせた情熱を感じました。しかし、背景の作画に力を入れていない人が多かったです。背景は世界観やシーンのムードを伝える大切な要素。おろそかにしてはいけません。他にも、せっかくの面白さが読者に伝わりづらそうで勿体ないな!と感じる点も多かったです。各作品に面白い芯の部分を感じたので、それがもっと多くの人に伝わるように考えてください。企画をありきたりにしろというわけではなく、尖っていて全然いいので、独自の設定や台詞、絵、展開を精査し、読者の頭に「?」が浮かぶ頻度をミニマムにする、読みやすさへの意識をして次回作を描いてみて欲しいです。その点で、『また会う日まで堕天』は頭ひとつ抜けていた印象です。
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