
「ユミコノブラ」鈴石晴喜
あらすじ
誘拐犯から解放された田中くん。しかし、誘拐犯の家にゆみ姉のブラジャーを置いてきてしまい…!?
編集部講評
「誘拐犯の家にブラジャーを置き忘れる」という突飛すぎる状況ながら、主人公の意思で進む展開と端的な言葉選びで読まされる作品でした。「ゆみ姉の怒りは僕のもの」というセリフから、主人公のまっすぐな執着が感じられて非常に良かったです。キャラデザやキャラの顔の作りにもっとこだわることができたら、より広い読者に刺さっていくと思います。作家性を大切に、次回作も突き進んでください。
岸川瑞樹先生講評
予想できない展開の連続で非常に面白かったです。作中で起きている出来事と、主人公の感情の動きとで読んでいて物凄く振り回される感覚があり、ラストまでずっとわくわくする作品でした。
絵柄も個性的で、躍動感のある絵がとても良かったです。アクションシーンの構図にもこだわりを感じました。
強いて言えば、12ページ目は作中でも最初の見せ場だと思うので、少しだけ他のシーン以上に力を入れて丁寧に描けると良いなと思いました。主人公の衝撃が読者にダイレクトに伝わって印象がより強くなるかなと思います。

「サンドバッグ」ひるあんどん
あらすじ
自分がないことにコンプレックスを抱える主人公。ある朝目覚めるとサンドバッグになっていて…?
編集部講評
画面作りにセンスを感じます。熱のこもったセリフも非常に良かったです。ただ、「魔女」についての明確な説明がないままお話が完結してしまっており読後に謎が残ります。次回作では、細部へのこだわりは引き続き大切にしつつ、読後感まで気を配り読者の満足感を上げられるよう意識してみてほしいです。期待しています。
岸川瑞樹先生講評
1コマ1コマの絵力が凄まじく、これだけのページ数にも関わらず全ページが魅力的な画面に仕上がっていると思いました。読んでいて思わず見惚れてしまう絵です。主人公の素直なセリフの言葉選びもとても良く、印象に残るシーンが多かったです。
その分コマ割がやや読みづらく感じる部分が惜しく感じました。インパクトのあるレイアウトが多く面白いのですが、多用すると読みづらさが勝ってしまう気がしたので、もう少し縦割りにするシーンなどを絞ってここぞという場面で出せたらより没入できる作品になるかと思います。
ヒロインが謎めいた存在のまま物語が終わるのは作品の空気感的にも素敵なラストだなと思ったのですが、一方で魔女の存在についての掘り下げはもう少しあっても良いのかなと感じました。多くを語らなさ、が魅力ではあると思うのですが、読者が魔女について興味を持ち続けられる程度には情報を小出しに出来るとより引き込まれるのかなと思います。

「望月高校オカルト研究部」愛沢毛玉
あらすじ
望月高校オカルト研究部の面々は、学校に昔からある古い祠について、真相を探るが…?
編集部講評
読ませるのが難しい題材ながら、細かいキャラクター造形や、情報の出し方が上手く、最後まで楽しく読めました。オカルトに頼らず、丁寧に謎が明かされたのも良かったです。キャラクター数が多く、少し平坦な読み味になってしまったのがもったいなかったです。印象に残る展開を意識できると、より面白い作品が作れるかと思います。
岸川瑞樹先生講評
絵がとにかく上手いです。ポップで可愛らしい雰囲気の絵柄ですが、その分見せ場の描き込みが際立つとてもバランスの良いタッチだと思いました。メインの登場人物4人で進行していくので画面の人数は常に多いですが、それでも画面がごちゃつかず非常に読みすい画面作りが出来ていました。
基本的に登場人物の内面が掘り下げられることがなく、出来事を追うだけになってしまっていたのが少し勿体なく感じました。キャラの内面が見えない分、物語全体がどこか他人事のような印象を受けてしまったので、最後までオカ研の活動に没入しきれない感覚がありました。会話シーンなどのやり取りも楽しく、見た目的にも魅力のあるキャラクターを作れる力があると感じたので、内面の描写をプラスして読者を物語に引き込むことができれば、ラストの演出もより効いてくると思います。

「強い石」今村孔輝
あらすじ
ある日、石になった葉を見つけた西川。石化の原因は、同じクラスの少女だった――。
編集部講評
大人に対する子どもなりの視点や戸惑いが丁寧に描かれていて、感情の機微にリアリティを感じました。全体的に静かな語り口で好印象ですが、ラストがややビターで読後感としては少し物足りなさも残ります。現実的な結末ではありますが、漫画としてのカタルシスをもう一歩強めても良かったかもしれません。シンプルな絵柄が題材とマッチしていました。次回作を楽しみにしています。
岸川瑞樹先生講評
読んでいて気持ちが良い作品でした。可愛らしくてとっつきやすい絵柄で、コマ運びも上手くとても読みやすかったです。主人公とヒロインのキャラデザが対照的なので、二人が並んでいると画面にメリハリが出る点も良かったです。
ストーリーや展開はやや王道だったので、もう少し読者の予想を飛び越えるような要素があればさらに読み応えのある作品になるかと思います。
またキャラ二人の好感度が高かった分、ラストシーンのあっさりさに少し物足りなさを感じました。最後まで読んだ読者は二人のことを好きになっていると思うので、彼らの少し先の未来を感じさせる終わり方だったり、もしくは絵的なインパクトがあるラストシーンがあればより読み手の心に残る作品になると思います。

「冷たい空の下」薊瑞貴
あらすじ
事故で親を亡くした看守と罪と向き合う受刑者の、人間の善悪を描いた心抉る物語。
編集部講評
刑務所を舞台に看守と囚人という形で人間の善悪という難しテーマを見事に描き切ったところが評価されました。セリフの強さもあり引き込まれるのですが、ストーリーの流れに作為的な不自然さを感じられる場面があったので、よりキャラの心情を掘り下げて描き読者をさらに引き込んで欲しいと思います。
岸川瑞樹先生講評
絵もストーリーも素晴らしかったです。
主人公の過去が、短いページ数ながらも読者に魅力が伝わるよう過不足なく描写されていて、あっという間に引き込まれました。55ページからの息を呑む様な展開も素晴らしかったです。最後までドキドキさせられる、非常に満足感の高い作品でした。
絵も個性があり、特にキャラの表情がとても良かったです。シリアスな内容にマッチした絵のタッチで、各シーンの緊張感が表情から伝わってきました。ホラー漫画っぽさやレトロ感のある絵柄なので人は選ぶかもしれませんが、作家の色が出ていて個人的にはとても好みでした。個性を残しながら、今っぽい絵柄にチューニング出来たらより多くの人に届きやすくなるかなと思いました。

「ファンレター」はまち乃藍
あらすじ
クソコメを沢山もらいマンガが描けなくなった主人公。1通のファンレターは彼を救う…のか!?
編集部講評
丁寧で勢いのある感情表現や、リアルなエピソードの重ね方に、視点の鋭さとセンスを感じます。次回作では、読者の予想を超える結末を作ることを意識してみてください。また、より丁寧に線を描くと読者の満足感をグッと上げられると思います。今後に期待しております。
岸川瑞樹先生講評
主人公の未熟さや過去をしっかりと掘り下げて描写していたので、ラストの主人公の行動に成長を感じることが出来て読後感がとても良かったです。
モチーフが漫画家で、なおかつ辛辣なコメントを受ける場面から物語がスタートしたため、どうしても先の展開がなんとなく読めてしまうところが少し勿体なく感じました。読者の予想を裏切る要素をもう一捻り足せればより読者の心に残る作品になる思います。
絵に関しては、全体的に構図に工夫が効いていて、読者を飽きさせない画面作りが出来ていると感じました。単純に画力を上げるよりも、印象的な絵作りの力を身につけるのはなかなか難しいことなので、武器になる要素だと思います。あとは画力をブラッシュアップして丁寧な線を引く様に出来れば、より作品全体の満足度が上げられると思います。

「鰰」華河秀英/神野耀
あらすじ
不運に見舞われ続ける少年の前に現れたのは、魚の姿の守護神だった――。
編集部講評
作画の地力が高く、キャラクターも魅力的でコメディとして楽しく拝読いたしました。一方で展開にやや不自然さがあり、没入を妨げる印象です。作品の方向性を序盤で明示し、魅せ場に向けたフリを設計できると、読後感がより強く残る作品になるかと存じます。次回作を楽しみにしております。
岸川瑞樹先生講評
画力が高く、背景も丁寧に描かれていてハイレベルな絵作りが出来ていると思いました。キャラクター同士の掛け合いも軽快で、楽しく読める作品でした。
過去回想に入る段階では、ヒューマンドラマ系の展開かな、ここから主人公はどう変わるのかな?と思いつつ読み進めていたので、その後の展開はやや期待を裏切られた感覚がありました。完全にギャグに振り切る流れがやや急に感じたので、もう少し早い段階で明確に作品のノリを示した方が、読み手もコメディを受け入れる準備が出来て良いかなと思いました。個人的には回想シーンに入るより前に(ラスト6ページの様な)コメディであることを提示してしまった方が、回想の力の入った作画もフリとして効いてくる様に思います。
絵のレベルが高いので、内容の面で読者を物語に没入させる工夫が出来れば、より作品の攻撃力が上がると思います。

「背骨」大江あいう
あらすじ
幼馴染の綾とはもう長い付き合い。でも、綾と性格が合わないことが苦しくなってきてしまい…
編集部講評
うまくいかなくなってしまった友情を、歪んだ背骨で例えるセンスが素晴らしかったです。一方で2人が仲直りするきっかけが曖昧に見えたので、エピソードを足して丁寧に組めたらより良かったと思います。また背景や斜線を自分の手で描くことで、よりレベルの高い画面作りにチャレンジしてみてほしいです。次回作も期待しております。
岸川瑞樹先生講評
テーマ選びが凄く良かったです。友情の一時的なすれ違いでなく、積み重ねが限界を迎える描写がとてもリアルでドキッとさせられました。その分、主人公が「好きだから」とまで言い切れる部分までの心の動きが少し急に感じました。見かけた子供に過去の自分達を重ねる描写はとても良かったので、そこのページ数をもう少し増やして丁寧に描写することで、より満足度が高い作品になるかと思います。
女の子の顔もとても可愛く描けており、見せ場の描き込みもとても良かったです。会話劇が続くとどうしても画面が単調になってしまいがちなので、構図やレイアウトを工夫して読み手の印象に残りやすい画面作りを意識することで、より作品の強度が上げられると思いました。
- 「泡と消える島」加原ゆうま
- 「アンテナ天使」野本巌
- 「人間!AI!うんこ!!」逃避行天国
- 「無題」ショウノ
- 「Food Of Life」太田健介
- 「おじいちゃんがチュパカブラ拾ってきた」鳴島鳴
- 「井島岳国境哨戒基地より」心明堂
- 「ブププ」久田総一郎
- 「ドゥロー ピクチャーズ」山田ライニ
- 「きゃぴガル・メタモル」さんしゅー悠




今回も少年ジャンプ+漫画賞に沢山の投稿ありがとうございました!投稿作品それぞれ、個性はありつつ好感度の高いキャラクターや、楽しく読める会話のセンスが光っていて全体としてレベルが高く感じました。とはいえ、ところどころ納得感の薄い展開や、ふりが効いてなくてせっかくのドラマに盛り上がりが作れていなかったりと物足りなく感じる部分もありました。良い部分はそのままに、都度都度、読者目線でちゃんと伝わるかな?と一歩引いて作品を眺めて丁寧に作品を練り上げていってもらえたらなと思います。投稿者の皆さんの成長した次回作を楽しみにしています!
どの作品もレベルが高く、とても楽しく読ませて頂きました。ひたすら机に向かい続けることも大切ですが、よく寝て食べて動いて、それからたくさん漫画を描くのが面白い漫画を生むための最短ルートだと思っています。ネームが面白いかよく分からなくなった時には、一晩寝かせてから読み返すと、頭が冴えてダメなところが見えてきたりします。睡眠は大事です。たくさんインプットして脳味噌に栄養を与えてください。そしてまた漫画を描きましょう。皆さんの次の作品が読める日を楽しみにしています。応援しております!
これまでの「少年ジャンプ+漫画賞」結果発表はこちら