少年ジャンプ+に受賞作掲載

「超銀河団浄化構想」寺本愚弐
あらすじ
主人公のたくみは、実は宇宙人で地球人が存続するに値するか潜入しに来ていた。しかし、彼女のハナを観察するうちに…?
編集部講評
極端な設定ながら、キャラの心情を丁寧に描いていて、エンタメ性高く楽しく読ませていただきました。主人公が地球人に肩入れするまでの流れが若干無理があったり、読みにくいところがあったりなど、整理できる箇所は多くあるように思います。次回作も期待しております。
松本直也先生講評
まず最初のツカミがいいなと思いました。小さな日常から入って、宇宙船という違和感を見せてして、めくりの見開きでこの作品を象徴する場面を見せる。十分に続きを読んでみようかなと思わせる力を発生させてるなと思いました。その後の2人のやり取りはやや読み手を置き去りにしてしまう感じを受けましたが、それは描いている内容が悪いのではなく、まだ作者ワールドともいえる独特の空気感のようなものを形成できていないからだと思います。普通と違う反応をする人物たちを成立させるためには、それをその作品ならではのリアリティとして成立させなくてはなりません。画力や演出力が伸びもっとそれを形成できるようになったら、同じ流れをもっとより多くの人がついて来れる形に成立させられるようになると思います。
大きな出来事と小さな出来事を対比で見せるのが上手く、全体の構成でも作中のエピソードでも端々でそれが上手く機能していました。ラストの土星の輪を指輪に例えるのも面白かったです。
少し触れたように、所々キャラクターの行動についていきにくい事があったので、それらを作者のワールドで包み込んで、独自のリアリティの中に読者を引きずり込めるような作家性にまで昇華できたら、よりすごい作家さんになるのではないかと思います。

「伝説のバンド」岩下だんご
あらすじ
ノリで載せたバンド演奏動画が炎上し人目を気にするちえり。苦労を乗り越えバンドの再結成をするが…!?
編集部講評
SNSの炎上という現代人が共感しやすいものを入り口に、青春譚を読みやすく丁寧に描き上げた点が評価されました。ただテーマや主人公の描き方など既存作品の雰囲気を感じるところもあり、今後はその点でオリジナリティ溢れるものを期待します!
松本直也先生講評
面白かったです。まず、冒頭の強いフリがしっかりと効いていました。そしてその冒頭も含めてなんですが、下手すると話が暗くなりそうなシリアスなフリが入った後に明るく切り返すのが上手くて、しっかりスパイスとして効かせつつ深刻になりすぎないようにするストレスコントロールのバランスがとても素晴らしかったです。キャラクターたちも好感度が高くて素直に応援できました。ちえりもよっくんも心の傷からくる歪みを持ってるもののどこか憎めない可愛げがあり、りんごは心地よくグイグイ話を前に引っ張ってくれるパワーと魅力的なキャラクター性を両立していました。これは描き手の作家性からくるものも大きいと思うので、別のお話を描くときにも生きてくる明確な武器だと思います。
好感度の高い絵柄で、シンプルながら表情での感情表現も的確で、全体通して画力も高かったです。この作品を見る限りではすでに余裕でプロのレベルに達してる方だなと思いました。

「Dream error」鮫島ふに
あらすじ
病で亡くなった母にもう一度会いたいと夢日記をつける少年エスター、しかし続けていく内に様子がおかしくなって──。
編集部講評
よくある題材ではありますが、しっかり驚きと怖さを表現できていました。可愛らしい絵柄と確かな画力も大きな武器になると思います。画面の使い方が窮屈に感じるので、絵で魅せることを意識してネームを作ってみてください。また、次回作では読後感のよい作品にもチャレンジしてみてほしいです。今後も期待しております。
松本直也先生講評
冒頭が気を引くフックから入ってるのが良かったです。どこからどこまでが夢なのかわからないというお話を短いページでしっかり気になる終わり方で描き切る構成力も感じました。
画力が高く、絵柄も魅力的で表情による演出力も高いと思いました。ただ個人的にはこれだけの画力があるのに全体として漫画がこじんまりとして感じるのがもったいないと感じました。これは、フキダシを絵よりも先に読む位置に入れるクセが一つの原因かなと思います。それゆえ絵が挿絵になってしまっています。
これだけ絵を表情で演出できるなら、先に絵を見せてセリフを添え物にする構造のコマがもっとあった方が漫画全体が映える気がします。
そのコマにおいて、主役となるべきフックを持っているのはキャラなのかワードなのかを判断をし、読者の視線の流れを意識しながらどちらを先に見せるかを考えてフキダシの位置を決める。これを意識することで、セリフを読ませてお話を進めるだけではなく絵の魅力やキャラクター性で気を引いてお話を進めていく技術が磨かれていくといいなと思いました。その結果絵が挿絵ではなく主役になると、より武器として活きてくるんじゃないかと思います。

「meat」しま太郎
あらすじ
狩りの才能を持ちながら、動物を殺せない少年ルカ。ある日、祖母が熊に襲われ――。
編集部講評
重厚なテーマと映像的な演出により、緊張感が途切れず最後まで楽しく読めました。一方で、祖母の死から動物を殺す結論へ至る因果が弱く、主人公の変化が他者要因に見える点は惜しく感じます。主題の焦点を絞り、決断のきっかけを明確にできると、作品全体の納得感がより増すと思います。ベルガーの存在が作品全体の空気感を和らげており印象的でした。次回作を楽しみにしております。
松本直也先生講評
漫画力が高く、映像を見てるかのように引き込まれて流れるように最後まで読んでしまいました。場面の切り取り方が凄く上手くて、さりげなく読者を引き込むフックが配置されていてそれを絵で表現したり演出する能力も高かったです。
「社会の中での正義」と「自然の掟」に板挟みになるような物語については結論の出し方に好みが分かれるとは思いますが、おばあちゃん死んでなくてホントよかったです。「やらねばやられる、やったら食う」という弱肉強食の自然の掟を自分ごととして目の当たりにした時に、社会における正と自然界における正が主人公の中にしっかりと線引きされたんだと感じたんですが、主人公が動物を殺せるようになったきっかけのシーンが、ばあちゃんをやられた事への人間的な怒りや憎しみや後悔の織り混ざった感情(社会的要素)にも見えてしまうのが、最後の生きるために(自然界的要素)という結論に繋げるのに少し違和感になっていた気がしました。ただ、ここまで力のある作家さんなので、あえてそうしてるのかもしれません。
ベルガーの存在も良かったです。彼のおかげで物語が暗くなりすぎず、全体の好感度にも大きく寄与してるなと思いました。

「おばけちゃんと氷の葬儀屋」鬼灯村京
あらすじ
主人公・クリスは、「感情がない」と言われるほど無機質な人間だった。ある日、クリスは幽霊に取り憑かれてしまうが…?
編集部講評
丁寧に話が作られていて、細かい演出も上手く、才能を感じる作品でした。ただ、現状キャラ描写が弱く、共感すべきシーンで共感しきれないなど、もったいなかったです。題材のアイデアも含めて工夫できると良いかと思いました。次回作も期待しております。
松本直也先生講評
漫画に絵本のような雰囲気と好感度を生み出している可愛らしい絵柄に魅力を感じました。絵柄から生まれる童話感のおかげで、本来漫画では避けるべきモノローグとセリフベースでのストーリー進行が良さとして活きていました。
キャラ立てが上手くいっておらず、正直序盤は設定を説明されてるだけで読んでいて乗り切れなかったんですが、それでも中盤からのクリスとノエルのエピソード、その後のゆうれいちゃん(ノエル)とのやり取りにはグイグイ引き込まれてジーンとしている自分がいました。ドラマを演出しながら見せる能力がとても高いんだと思います。
その反面、先ほども触れたようにキャラクターを立てると言う事には課題ありな感じがしました。今回はキャラクターではなくドラマが主役のお話なのでそのせいかもしれませんが、「キャラを立てる」というのはキャラを気にならせる事であり、説明することではないというのを、これから漫画を山ほど描いていく中で感覚として掴んでいけたらいいんじゃないかと思います。

「独白」浦山風雲
あらすじ
学校でも、家庭でも問題を抱える少女・寧々。彼女の前に、ある日不気味な見た目の門が現れて…?
編集部講評
細部まで描き込まれた背景やモチーフと、キャラクターのシンプルな表情との対比が際立つ作品でした。主人公の行動がもたらす、前向きな結末も好印象です。他方、主人公が元の世界に帰る決断をしたきっかけについては、より具体的に描けると説得力が増すと思いました。また、今後は画力の向上にも努めて頂ければと思います。
松本直也先生講評
ほとんどの表情まで引き算された画風が漫画に独特な魅力を生み出していました。イジメや毒親などの要素は作為的になりがちで、作者が「ほら、コイツ悪いでしょう~?」って押し付けてくるような不快な描き方になる事が多いんですが、表情が引き算されてるおかげで頭の中で表情や感情を補完しながら読む構造になり、自然に寧々ちゃんの物語の一幕として受け止められました。
僕は聖書に詳しくないので、タイトルや冒頭の一文がどう物語と関わっているのかはよく分かりませんが、もしかしたらそこ含めてもっと考察的に読む楽しみ方もあるのかもしれません。
どちらにせよ、考察成分はそれを除いても面白いと思えるものになっていないと意味がありません。
そういう意味では、表立っての物語自体がポジティブな答えに向かっていく展開だったので、わからない僕でも最後まで絵柄が生み出す不思議な魅力を楽しむ事ができました。

「さよならランジェリー」金山りお
あらすじ
主人公の女の子は、最近パンツを盗まれてしまった。その犯人が捕まったと警察から連絡が来るが…?
編集部講評
目を引くカラーの使い方から、シュールな作風で面白く読ませていただきました。ただ、現状作家性だけで描いている印象もあり、ここから魅力的なキャラクターや合う題材が見つかると、レベルアップできるかと思います。次回作も期待しております。
松本直也先生講評
とてもキャッチーで、色彩も相まってとてもいい扉絵だなと思いました。電子コミック雑誌ではサムネイルで威力を発揮できる絵を描けるのはとても強い武器だと思います。作中の絵も特定の作家さんを想起させる画風ではあるものの情報のいなし方がうまく、見辛くなりがちなコントラストの強い画面作りを上手に魅力的に見せているなと思いました。
内容に関しては、人と違う題材で見たことのない独特な漫画を描いてやろうという気概は良しなんですが、キャラクターたちの思考に全くリアリティを感じず、人物として興味を持つことができませんでした。ただこれは単純に僕と趣味嗜好が合わなかっただけかもしれません。もしもこの先、読者からも同じ反応が来ることがあれば、独特さと読者にとって魅力的である事をどう両立するかと向き合ってみるのもいいんじゃないかと思います。

「鉄の肉詰め」林曜一
あらすじ
「もし人1人好きに使えたら、なにができるかな」つまらない毎日を過ごすケイは、コミュニケーションアンドロイドのクロコにそう漏らす。するとクロコは自分を好きに使えば良いと返して…
編集部講評
モノローグ運びと演出、ラストの展開に非常に作家性を感じる作品でした。まだ構成が冗長で読者に伝えきれていない部分も多かったり、線の粗さが目立つ部分もありましたが、作品を重ねていく中でぜひブラッシュアップしていきましょう。次回作にも期待しております。
松本直也先生講評
思春期の思考を漫画化したような物語を、孤独であることを難なく受け入れられる、不自由だけど自由なアンドロイドと、自由を求めながら人との繋がりの不自由から逃れられない人間の少年の対話で見せているのがキャッチーでした。
価値観の物差しが極度に少ない主人公が狭い価値観の中で達観し、悟った気になって行きついた別の狭い価値観の中で成長しないまま再び達観し、自己中心的なまま幕を下ろすという結末になったのは個人的に残念でした。
ただ僕と合わなかっただけで、まさに今思春期であったり、この主人公と同じような生きづらさを感じてる人たちにとっては、こういう物語が救いになったり、刺さったりする事もあるんだろうと思います。
口から黒煙を吐くシーンや、それが世界を覆っていくシーン、終盤の部屋が水中に沈んでいるシーン、ラストの電車内のシーンなど、印象的な場面の描き方が良かったです。
好きな作家や作品のダークな部分に強く感化されているように見えるので、それらの中に練り込まれているエンタメ性にも目を向けるといいと思います。
- 「MOON」かわう
- 「ステイゴールド人」のこり3粒
- 「プリズム」すずきさん
- 「BALL∞N」多聞
- 「悲廻」壱式遼
- 「PURESHOT」幸


今回も沢山の応募ありがとうございました!今回の応募作はバラエティに富み、本当に読んでいて楽しい選考になりました。ご自身の思いや描きたいテーマをしっかりと読者に伝わるよう、考え抜いて描かれたもの、その年代ならではのテーマを掘り下げて描いたもの、物語の構造で驚かせるもの等など、次はどんな作品に出会えるのだろうとワクワクしながら読んでいました。ご自身の今持っている特性を大事にして、それがさらに読者に伝わるように技術を上げ、またその特性を磨いて、他の誰でもないご自身だけの作風を育てていっていただきたいです。さらに成長した応募者の皆様の作品にまた出会えることを楽しみにしています!
目にみえる読者がネット上の声になっているので仕方ない事ではあるんですが、青年誌的なドラマ重視な作品が多く、キャラクターエンタメに特化した漫画が一つも無かったのは残念でした。今の時代に放つのが最も難しいジャンルの一つだとは思うんですが、時代に合わせた形で挑戦する作家さんや編集さんがもっと出てくるといいなと思います。その中で「伝説のバンド」は個々のキャラクターや作家性のノリに魅力がありましたし、一番エンタメに対しての意識も高いと感じました。
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