
「アングリーガール」鳴川蒼空
あらすじ
常に怒っていると勘違いされてしまう立腹さん。そんな彼女に、クラスのお調子者・馬鹿くんが声をかけ…?
編集部講評
ギャップや対比を活かしたキャラの見せ方が心地良く、思わず応援してしまう好感度の高さがありました。後半への盛り上がりには構成力の高さも感じます。一方で展開・設定そのものは既視感があり、またキャラデザ・背景など全体的な画面作りはまだまだです。他の作品に埋もれない独自性を身につけられるよう頑張りましょう。
大鳥雄介先生講評
立腹さんもまじか君も、原稿から引きずり出して抱きしめたくなるようなキャラクターでした。
まじか君は一見アホそうに見えつつも、実は人をよく観察していて、ここぞという場面では男気を出せるガッツがあり、とてもカッコよかったです。
「だって下心だし!」というセリフは、まじか君のアホさと誠実さの両方が表れていて、特に印象に残りました!
終盤、二人が大声で本音を言い合うシーンは、立腹さんの「本音を言い合える友達が欲しい」という願いが叶う瞬間でもあり、感動しました。
ただ、ラストに至るまでの流れがやや平坦に感じられたので、立腹さんの葛藤や展開にもう一段階驚きや盛り上がりがあると、本音をぶつけ合うラストがさらに印象的になったような気がします。
この作品はキャラクターの魅力がしっかり立っていて、絵も話もわかりやすく、読み終わったあとに幸せな気持ちになれました。
二人のやり取りを、もっと見ていたいです!

「『拝啓、ニーチェへ。』」金馬鈴昌
あらすじ
母に認められたい一心で、好きな音楽も友人も手放し、勉強に打ち込む井戸田絡。全国模試で結果を出すも、母から返ってきたのは拒絶で――。
編集部講評
盲信していた拠り所を破壊し、自ら人生を生き直す選択が痛快でした。ニーチェの解釈や音楽、お母さんなど前半のフリが後半で丁寧に回収され、読後の手応えも良いです。キャラのエピソードにはやや既視感があるため、ならではのエピソードが生めると、さらに満足度が増すと思います。また細かい点ですが、小物や頭身など縮尺の崩れも見受けられるので、細部まで整えると画面の完成度が上がるはずです。次回作を楽しみにしております。
大鳥雄介先生講評
盲目的に信じていた親という拠り所を壊し、主体性を持って人生に挑む主人公の姿に心を打たれました!
とても怖いし、孤独になるかもしれない生き方ですが、だからこそ価値があるのだと勇気づけられました。
終盤、主人公が自分の大好きな音楽で神を殺すシーンは、クライマックスにふさわしく、特に印象に残りました。
精神論だけで終わらせず、物理的にもギターで親父の酒を破壊していたのがよかったです。
多くの人に刺さるテーマだと思いました!

「佐藤先生を殺してくれ」素井徹
あらすじ
僕らの担任「佐藤タロー先生」は何かがおかしい。そんな先生を「殺したい」という同級生が現れて…!?
編集部講評
読者を引き込もうとする仕掛けがあって、最後まで飽きずに読める作品でした。尖りもあり、ストーリーもあるバランスの良さも良かったです。読者の想像力や理解力に任せてしまう部分も感じられたので、もう少し読者の思考をコントロールできたら、よりオチでスッキリできたかと思います。次回作も期待しております。
大鳥雄介先生講評
最初から最後まで展開がまったく予測できない漫画でした。
1ページ目からコマ外の使い方で仮想空間の伏線を張っていたり、冒頭はホラー漫画のテイストで進めつつ、後半で一気にひっくり返したりと、芸が細かくとても楽しく読めました。中でも「車に轢かれても死なない」のシーンはインパクトがあり、強く引き込まれました!ただ、佐藤先生の改心が早く感じられ、少し共感しづらい部分もありました。
アトムくんの説得ですぐに現実世界へ戻ってしまうので、その前に佐藤先生の最後の悪あがきのような描写を入れて、もう一段盛り上がりを作ってもよかったのかなと思いました。
発想がとても面白く、先の読めない魅力的な作品でしたので、物語の山場をどう作るかを意識して描けば、さらに印象に残る漫画になるのではないかと思いました!

「三者面談」田上翔利
あらすじ
教師生活も3年目。生徒との向き合い方に迷う日々。そんな中臨んだ三者面談に現れたのは、深爪で体調が悪そうな保護者で…!?
編集部講評
おばあさんのキャラが良く、テンポよく繰り出されるギャグが魅力の作品でした。ギャグで終わると見せかけて先生が前向きになるラストにも地力の高さを感じます。骨格の書き分けなどまだ画力に課題が残るので、これから研鑽を積んでいきましょう。次回作にも期待しております。
大鳥雄介先生講評
タイトルの通り三者面談をするだけのお話なんですが、しょうもない会話劇が頭おかしくて、とても楽しい漫画でした。全体を通して、ほぼすべてのシーンが教室の中で展開されるのも、限定された空間ならではの演出でオシャレだと感じました!とくにおばあちゃんが終始ぶっ飛んでいて、魅力的なキャラクターでした。
「深爪です」が一番好きなセリフです!

「貴方はまるで、」加藤ハシル
あらすじ
吸血鬼に襲われた主人公。家に引き籠っていたところ、突如、主演映画を撮りたいという女性が現れ…
編集部講評
女性キャラクターのデザイン・表情をとても魅力的に描けていました。一方で、シーンの読み取りやすさや全体のストーリー構成はまだまだ課題。
ネームの模写や作品研究などを通して、読みやすいネーム運びや構成力を磨いていってほしいです。
大鳥雄介先生講評
登場する女の子たちがかわいく、見ていてとても楽しかったです。
冒頭では吸血鬼の話だと思わせておいて、そこからまったく違う女の子との物語にシフトしていく構成が面白いと感じました!
ただ、全体的に淡々と物語が進むため、終盤で主人公が「俺の映画はずっと猫又が主人公だよ!」と叫ぶシーンは、少し気持ちが追いつきにくく感じました。
個人的には、吸血鬼の女の子がさらっと退場してしまうのがもったいなく感じたので、終盤で彼女に何かアクションを起こさせ、主人公と猫又さんの関係に決め手となるドラマを作ってもよかったのかなと思います。
そうすることでセリフにも説得力が生まれ、物語の締めも強くなる気がしました。
淡々とした描写自体はとても綺麗で情緒も感じられるので、その強みは残しつつ、二人の関係にもう少し起伏を持たせれば、より読者の心に残る漫画になるのではないかと思いました!

「OVER D-LIVES」meittei
あらすじ
怪物だらけの日本で、人類の武器は武装エレキギターだけだった。虐待の中で生きる少女・横尾は、正体を隠して怪物と戦っていたが……。
編集部講評
演出、モンスターデザイン、描き文字など、画作りが迫力満点で武器になっています。一方で鈴本の好感度の低さが最後まで残り、読後のすっきり感がやや弱いのが惜しいです。また、設定が複雑なので、情報の見せ方や提示順を整理するだけで格段に読みやすくなると思います。次回作を期待しています。
大鳥雄介先生講評
絵柄がいい意味で泥臭く、作品全体の熱量によく合っていました。
音楽、配信、変身、怪物、毒親など、作者さんの好きなものや描きたいことがたくさん詰め込まれていて、その勢いが楽しかったです。
ただ、もう少し要素を絞ってもよかったのかなとも感じました!
僕の読解力の問題かもしれませんが、情報が多く、ストーリーが追いづらく感じてしまいました。
また、人物も背景もアップのコマが多かったので、遠めの絵をもう少し挟んで、「今、誰が、どこで、何をしているのか」が伝わると、よりスムーズに読める気がします。
熱量と個性がとても魅力的なので、その持ち味を活かしつつ、読み手の目線を意識した描き方をすれば、今以上にグッと面白くなる作品だと感じました!
- 「パートタイム・キラー」柊シュウ
- 「±0」和束連理
- 「輝度450の綱」屑のからだ
- 「デッドライブナズ」大塚たろう
- 「脚が速い人」こーづか志郎
- 「こいつがやった」Saboru
- 「萌え袖ポケット」武弥枢
- 「ガラテア」森田涼


11-12月期も少年ジャンプ+漫画賞に沢山のご応募ありがとうございます。
現時点の完成度という点では少し点数を辛くつけてしまいましたが、それぞれに個性が光る部分があり楽しい審査となりました。
最終候補は若い方が多かったので、一言だけお伝えするなら、場面場面で誰が何をやっているのかがしっかり読者に伝わるか考え抜いて作画して欲しいです。せっかくの熱のこもった場面で読者に何がどうなっているのだろうと考えさせてしまってはそれまで積み上げたものが台無しになってしまいます。読みやすさ、わかりやすさは、作品の魅力を存分に伝えるための必須の技術です。作品づくりはありったけの情熱と自分の作品を客観的に見られる冷静さのどちらも持っていれば強いです。自分一人では難しい場合は編集者を補助的に使ってください。
成長した皆さんの次回作を心よりお待ちしています。
皆さん個性豊かでオリジナリティがあり、本当に素晴らしい作品ばかりでした。
読ませていただきありがとうございました!
僕自身、とても刺激を受けました。
これからもいろんなものを見て聞いて経験して、自分だけの個性を磨いていってほしいです。
そして、僕が審査員のときに応募してくれて本当に光栄です。
未熟な身ではありますが、短い作家歴の中で大事だなと思ったことをお伝えできればと思います。
それは自分に嘘をつかず、カッコつけず、取り繕わないことです。
自分が本当に描きたいものを描くこと。
その描きたいものを「どう描けば読者が楽しんでくれるか」「どう描けば読みやすくなるか」を考えることも、とても大切だと思っています。
そして、これからも創作活動を続けていくなら、ずっと座って描くことになります。
人によっては立って描くかもしれません。
いずれにせよ絶対に体を痛めるので、今のうちからストレッチを日課にしてください。
1日3分でもいいです。
腰をやりやすいのでブリッジを強くおすすめします!
同じ作家仲間としても、一読者としても、皆さんの次回作をとても楽しみにしています!
僕も頑張ります。一緒に頑張りましょう!
これまでの「少年ジャンプ+漫画賞」結果発表はこちら