「少年ジャンプ+」に掲載されている連載作品(※)は、好きな1ページをTシャツにプリントして購入することができます。そこでマンガ好きな4組の著名人に「Tシャツにしたい1ページ」をセレクトいただき、Tシャツを作ってみました。ページを選んだ理由とともに、ご自身のマンガ遍歴や、好きな作品についてもお話をおうかがいしていきます。
ふたりめに登場いただくのは、麻雀プロの瑞原明奈さん。世代を問わず頭脳スポーツとして人気が高まっている麻雀。そのプロ麻雀界のなかでもわずか36名のみが在籍できる「Mリーグ」でU-NEXT Piratesの一員として熱い戦いを繰り広げながら、プライベートでは2児の母としての一面も持つ瑞原さんが選ぶ「Tシャツにしたい1ページ」とは?
※2017年12月4日以降に「週刊少年ジャンプ」または「少年ジャンプ+」で公開された話のみ。また、対象期間内の公開話でも一部対象外となっている作品あり。
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麻雀プロ
瑞原 明奈
みずはら・あきな
長崎県佐世保市出身。最高位戦日本プロ麻雀協会およびU-NEXT Pirates所属。2014年プロ入り。2017年に最高位戦日本プロ麻雀協会に移籍。2019年、麻雀プロリーグ戦・MリーグのU-NEXT Piratesよりドラフト指名。Mリーグでは2021-22シーズンにMVPを獲得。2児の母。
――まずは完成したTシャツを見られての感想をお聞かせください。
思っていた以上にしっかりしていますね。Tシャツに柄の部分をペタッと貼ったものだと剥がれたりその部分だけ少し浮いているように見えたりしますが、ちゃんと印刷されていて洗濯しても色落ちの心配もなさそうで。
――瑞原さんが今回Tシャツにしたのは、『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴、集英社)の第103話「縁壱零式」で、竈門炭治郎が小鉄に“次に繋ぐための努力”の必要性を説くシーンでした。ここを選ばれた理由をお伺いできますか?
選んだ理由は「あるべき心構えを思い出させてくれるシーン」だからです。『鬼滅の刃』って今あるものだけではなく、何百年も続いてきたこと、みんなで繋いできたもので何かを達成する話だと思うんです。炭治郎も柱の人たちも「自分が駄目でも次に繋ぐ」という意識がすごく強いじゃないですか。今回選んだシーンでも、炭治郎が「自分たちができるかはわからないけど、自分たちが繋いでいっていつか誰かが鬼舞辻無惨を倒すはず」という話をしていますし。
――その考え方に共感すると。
急に別のマンガの話になっちゃいますが、『ONE PIECE』(尾田栄一郎、集英社)第396話でニコ・ロビンの母であるニコ・オルビアがロビンへ言う「あなた達の生きる未来を!! 私達が諦めるわけにはいかないっ!!!」というセリフがすごく好きなんです。読んでいた当時はそれほどピンとこなかったんですけど、いざ自分が親になってから読むとあの時のオルビアの気持ちが心から理解できるようになって。
親になる前は自分が死んだあとの世界なんてあまり想像できませんでしたが、子どもが生まれてからは彼らが生きて、さらにその子どもたちが生きていく未来を実感を持って想像できるようになりました。その未来がよくなるように、自分も何か繋いでいきたいという気持ちを持つようになったんです。
――炭治郎が語ることにも通じる熱い思いが伝わりました。
こういう“繋ぐ”ことの大切さを表すシーンは『鬼滅の刃』にいっぱい散りばめられているんですよね。単話でもそうだし、物語全体でもそう。今回選んだのは、そのテーマがすごく凝縮されてるシーンです。
――このシーンを選ぶにあたって、マンガを読み直しましたか?
はい。一部だけを読み返そうとしたんですけど、結局止まらなくて最後まで読んでしまいました。これで何回目かわからないくらい何度も読んでいるのに、最後のほうはやっぱり大号泣しちゃって(笑)。
――それだけ思い入れのある作品だと、好きなシーンを選ぶのも大変だったのでは?
大変でした! ただ単純に好きなシーンを選んだというわけではないんですよ。今回は「『鬼滅の刃』から1ページを切り取るなら」というコンセプトで選んだので。あとTシャツにした時にシンプルにかっこいい絵のシーンとかではなく、せっかくマンガのワンシーンを選ぶからにはごちゃっとさせたかったというのもありました。
――ほかに候補にされていたページはありましたか?
煉獄さんが散ったあとに炭治郎が「悔しいなぁ」って言うシーン。「何か一つできるようになってもまたすぐ目の前に分厚い壁があるんだ すごい人はもっとずっと先のところで戦っているのに俺はまだそこに行けない」って続くんですけど、そこが本当に好きですごく共感しますね。私は麻雀の試合に負ける度に、いつもあのページの炭治郎になっています(笑)。(※編注:Tシャツ機能対象期間外の公開話)
――『鬼滅の刃』はいつ頃から読み始めましたか?
確か完結する少し前から手を出したんだったかな? 娘がアニメの放送を見始めたのが先だったかな? もちろんその前から存在は知っていましたが、普段マンガは完結してから一気読みすることが多いので、無限城に入った辺りで「そろそろ終わりそうだから」と読み始めた気がします。
――『鬼滅の刃』のどんなところが好きか改めて教えてください。
好きなポイントは色々ありますが、まずは共感できるポイントが多いところです。炭治郎は主人公ではあるけど、最強の戦士というわけではないですよね。本当に何もできない男の子だったけど少しずつ強くなっていく姿にすごく共感しちゃいます。先ほどの「悔しいなぁ」もそうだし、「調子に乗るなよ」と言われて「乗れるわけないだろうが!! 今俺が自分の弱さにどれだけ打ちのめされてると思ってんだ」と怒るシーンとか「私も私も」と心から共感します。
――話しぶりから、本当に深く共感されているのが伝わります。
これは誰にも言ったことないんですけど、『鬼滅の刃』で極限まで集中するための「反復動作」としてルーティンを決めておいたほうがいいという話があるんです。炭治郎の場合は大切な家族の顔と煉獄さんの「心を燃やせ」という言葉を思い出すんですけど、私も試合中に集中力を高めるために心のなかでよく「心を燃やせ」と言っています。
――言ってはなんですが、小学生男子みたいな……(笑)。
私、ちょっと厨二的なところがあって(笑)。あと『鬼滅の刃』は、言葉にするのが難しいんですけど空気感が優しいんですよね。私は『鬼滅の刃』のキャラクターを親視点で見ていて「みんな頑張れー」と子どもを応援しているような気持ちで読んでいるんです。それと同じような母性というか優しさのようなものを感じます。どこのシーンというわけではなく、全体的な空気感から。
――そんな親目線で見ていて、特に好きなキャラクターはいますか?
(嘴平)伊之助です。もう、かわいくってしょうがないです。最初は(我妻)善逸が好きでした。私は『ONE PIECE』でもウソップが好きで、強い人の中にいる“できそこない”的なポジションのキャラクターが好きなんですよね。しかも善逸は覚醒したら超強いという厨二の人が好きそうなキャラクターだし、実際好きになったんです。でも気が付いたら伊之助の方が好きになってしまっていました。どこでそう変わったかはわからないですけど……。
――ちなみに、先ほど娘さんが先に『鬼滅の刃』に触れていたかもという話がありましたが、今も一緒に楽しんでいますか?
はい。娘はアニメの第1期が滅茶苦茶好きで何周もしていました。当時はまだ幼稚園生だったので、たぶんよくわからないまま見始めたアニメが『鬼滅の刃』で。「(栗花落)カナヲのコスプレが欲しい」と言ったので誕生日にプレゼントしたり、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』はふたりで観に行ったりしました。
――瑞原さんはアニメも楽しまれているんですね。では今後予定されている『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』も楽しみにされている?
7月にやるんですよね? 3部作だそうですが、どれくらいのスパンで上映されるのか早く教えてほしいです。それによって私の気持ちの作り方が変わるので……(笑)
作品を読む ![]()
――『鬼滅の刃』だけでも話が尽きなさそうですが(笑)。ほかのマンガについてもお聞きします。まず記憶に残っている最初のマンガ体験は?
「りぼん」で読んでいた少女マンガです。毎月お母さんが買ってくれて、ふたつ上のお姉ちゃんと読んでいました。『こどものおもちゃ』(小花美穂、集英社)や『ご近所物語』(矢沢あい、集英社)が連載していた頃です。少女マンガはその後もずっと好きで最近だと『僕と君の大切な話』(ろびこ、講談社)がすごくよかったし、『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子、講談社)や『ちはやふる』(末次由紀、講談社)も大好きですね。
――今回選ばれていたのが『鬼滅の刃』で、ほかにも『ONE PIECE』や『あしたのジョー』などが好きと伺っていたので、意外なお答えでした。
基本的には少女マンガが好きなんですけど、そういったバトル系も好きだし、ジャンルや作風にこだわらず面白ければ何でも読みます。好きになった人が好き、みたいな(笑)。
――それでは、人生の中で特に好きなマンガを3つ選んでください。
ここまでたっぷり語ってきた『鬼滅の刃』と、あと『ONE PIECE』も入りますね。私たちの世代にとって『ONE PIECE』って「強く正しく優しい存在でいなければいけない」みたいなことを教えてくれた存在なので。でも3つと言われると難しいですね。絶対に何か大事な作品を忘れる気がするなあ……。
――今日の気分でパッと答えていただいても全然大丈夫です。
じゃあ、あとはさっきも触れた『ちはやふる』かな? でも『ご近所物語』も好きなんですよ。私にとってのバイブル的な存在なので。あ、4つになっちゃいました(笑)。
――過去に「マンガはリフレッシュする時に読む」と語っていましたね。
普段から麻雀のことばかり考えてるので、脳みそをリフレッシュさせなきゃと思う時が定期的にあるんです。そういう時に、没入感があるというか、作品の世界に浸れるマンガってすごくいいんですよ。そのためには程よく長い……10数巻くらいで完結しているものがよくって、一気読みすると頭がそっちにいくからだいぶストレス解消になります。
――それなら少年ジャンプ+で連載されている『SPY×FAMILY』(遠藤達哉、集英社)なんて長さ的にはちょうどいいのでは?
実はまだ読んでないんですよ。私、基本的にマンガは完結してから一気に読みたい派なんです。だから世間で流行っていたり周りで評判になっていたりしても手を出せない作品が多くって。『SPY×FAMILY』も娘がアニメを観ていたんですけど、絶対に前情報を入れたくないから「ネタバレは絶対にしないでね」「私がいないところで観てね」と禁止令を出して。だから娘は私が朝起きる前とかに観てくれていました。
――家族ものだし、わかりやすくエピソードで区切られていて気楽に読めて、しかも滅茶苦茶面白いので、瑞原さんも早く読めるといいですね。
そうやって面白いと言われるほど我慢したくなるんですよ(笑)。とにかく一気読みして楽しみたいので。
――麻雀マンガはあまり読まれないとか?
読むものもあるんですけど、たくさん読んでいるわけではないですね。
――自分が専門の作品は、マンガに限らず少し受け入れづらい部分もあるかもしれませんね。
変な話なんですけど、『ちはやふる』が私の中の理想の頭脳スポ根マンガなんです。あんな感じの麻雀マンガができたらいいなとずっと思っていて。
――仰りたいことは何となくわかります。ルールを完全に把握できているわけではないけど、すごく楽しめる。そういう敷居の低い麻雀マンガがあってほしいと。
そうですそうです。『ちはやふる』を読んだ人は競技かるたに興味を持つじゃないですか? ああいうマンガが麻雀をテーマにして生まれるような世界になるのが、私の目標のひとつかもしれません。まだまだ麻雀ってだけでナナメから見る人もいるので。
――麻雀も以前に比べてメジャーなものになったと思いますが、確かに少女マンガ誌に麻雀マンガが載るイメージは湧かないですね。
麻雀マンガとは違うんですよね。『咲-Saki-』(小林立、スクウェア・エニックス)という作品があって、あれをきっかけに麻雀を好きになった女の子もたくさんいるんですけど、それでもやっぱりどこか男性向けで。もちろん『咲-Saki-』を否定するわけではないし、いい作品なんですけど。同じ女子高生が麻雀をするマンガでも、『ちはやふる』みたいに青春マンガの題材が麻雀という作品が生まれてくれたら嬉しいです。ただ、そもそも現実の高校に麻雀部がないんですけど。
――『ちはやふる』のような麻雀マンガがあっても違和感のない、みんながカジュアルに麻雀をするような世界になってほしいと。
そうですね。少し話が飛躍するんですけど……今、麻雀は大人の男性が嗜む趣味から、競技性のある知的ゲームというイメージへと変わっていく過渡期にあります。私が現役でいる間にどうなるかわからないし、何世代先になるかわかりませんが、麻雀が多くの人に愛される世界を作るために私も繋いでいきたいです。
――『鬼滅の刃』のテーマとリンクしていますね。そういった世界に近づいていると感じますか?
年々、麻雀のイメージは向上していると実感しています。小学生で麻雀をやる子も増えているし、中高生もアプリで麻雀をやる人が増えています。だから一歩ずつ普及が進んではいるんですけど、今はまだようやくその流れを作るための立ち上げが終わったところで。その熱を収束させないよう、ここからがすごく大事だと思って活動しています。
――まるでマンガのような情熱を感じます。今日伺ったお話で瑞原さんがかなりのマンガ好きだとわかりましたが、やはり生きていくうえで影響は受けていますか?
もちろん。例えば『ご近所物語』の最終話のラストにある「手に入れたいのはハッピーエンドじゃない 鍛え抜かれたハッピーマインドだ」というモノローグは私のモットーになっていますし。
――それこそ、そのページなんかがTシャツにできるといいですよね。
確かに! 多数のマンガファンで総選挙したら上位には入らないかもしれないけど、やっぱり人によって好きとか響いた作品やシーンは違うし、あらゆるマンガのシーンをTシャツにできると面白いですよね。
取材・執筆:はるのおと 撮影:飯本貴子 ヘアメイク:米尾太一 ページデザイン:前田定則 編集:春田知子(株式会社ツドイ)
「#ジャンプラT作ってみた」次回は5/9(金)、フースーヤのおふたりのインタビューを公開予定です。
瑞原さんが選んだ
1ページのTシャツ購入は、
こちらから!
『鬼滅の刃』第103話
「縁壱零式」
「長いスカート丈も鳩野の自意識もめっちゃわかる」
マンガを愛する宇垣美里は“ジャンプラT”で友だちを作りたい!
「少年ジャンプ+」で閲覧できる連載作品※は、好きな1ページをTシャツまたはトートバッグにプリントして購入することができます。
Tシャツをつくってみる※2017年12月4日以降に「週刊少年ジャンプ」または「少年ジャンプ+」で公開された話のみ。また、対象期間内の公開話でも一部対象外となっている作品あり。