少年ジャンプ+に受賞作掲載
「No.2」春野昼下
あらすじ
テニスのNo.1プレーヤーを目指すものの、体格に恵まれない隅田。同じクラブの矢部に負けっぱなしの日々だった。しかしある日、身長が2.4mまで伸びて…!?
編集部講評
人間がハムスターに見える演出や多彩な表情など、見どころの多い作品でした。
矢部が再登場するまでが若干長めに感じられつつも、主人公と矢部のドラマできっちりとオチをつける構成や、2人の心理描写もとても良かったです。今後に期待しております。
タカヒロ先生講評
雰囲気にマッチしたシャープな絵が素敵です。話も王道で良かったです。
ライバルキャラのこういう造形は今の時流にとても合っており、良いキャラを作る感覚が備わってるんだと思いました。
「ドキドキヌプヌプメモリアルはさよなら」深津ザオウ
あらすじ
ある日主人公は、自作のエロ漫画を好きな男の子に読まれてしまう。しかしその反応は意外なもので…?
編集部講評
構成力が高く、意外性のある入口から爽やかな青春ものへと続いていくその展開も見事でした。
イキイキとしたキャラの表情も魅力的です。主人公の成長が胸を打つ、読後感の良い快作でした。
出来事の独自性・印象がやや薄いので、「先を読ませる推進力」をより意識して次作に挑戦してみてください。期待しております。
タカヒロ先生講評
主人公の表情がとても活き活きとしてて、話も面白かったです。
ラストの展開も爽やかで好きです。タイトルのつけ方といい、とてもよく考えて漫画を組み立てた感じが伝わってきました。
「不完全で完璧」園田洋
あらすじ
ド緊張の演説を終え、なんとか生徒会会長と副会長になれた仁と風。だが、二人には誰にも言えない悩みがあり…!?
編集部講評
丁寧な描写で読みやすく、決して美麗な絵ではありませんが青春の甘酸っぱさがタッチにも現れており雰囲気の良い漫画でした。キャラの好感度も高く最後まで楽しめました。
今後はご自身の強みを活かし、他の方には描けない物語を期待します。
タカヒロ先生講評
ヒロインに愛嬌があって行動のひとつひとつが可愛いです。魅力的なキャラクターでした。逆に主人公側にもう一つ感情移入が出来なかったのがとても惜しいです。
早く次の作品が読みたいと思いました。
「魚と羊」牧野千尋
あらすじ
目の見えない少女まみは、ある日路上で絵を描く“おじさん”と出会う。おじさんの絵に温かさを感じたまみは、絵を教えてもらうよう頼むが…。
編集部講評
盲目の少女が感じる色や絵の描き方が独特で、非常にセンスが感じられます。キャラの表情に力があるのも良かったです。
ただドラマの本筋が進むまでに色々なエピソードを挟んでしまい、やや冗長に感じられました。
構成力をつけて、より高いレベルの作品を目指してください。
タカヒロ先生講評
感覚の魅せ方が素敵で、まさに題材であるアートを漫画を通して鑑賞している雰囲気を味わえました。これで話にさらに引き込まれるようになれば凄い事になると思います。
「ミス・ヒーロー」恐山竜次郎
あらすじ
給食をこぼした同級生に声をかけただけで、「ヒーローみたい」と懐かれ…
編集部講評
絵の見せ方やストーリーの迫力に独自性を感じられた作品でした。自分が描きたいキャラクターがはっきり見えたこともよかったです。
次は見せたいものをどのように見せたら読者に伝わりやすいかを研究してみてください。次回作も期待しております。
タカヒロ先生講評
13歳でここまで書ける事が凄いと思います。衝撃的な展開が読者を惹きつけるものになるかどうか、その判別が足りなかった気がしますが、それは年齢を重ねればすぐに掴めてくると思います。
「トーコと神様」しおざき
あらすじ
絵本作家を目指す主人公が“ある人”のお世話を頼まれて…
編集部講評
ラストまで丁寧にストーリーを描けていた作品でした。絵も丁寧で読みやすかったです。
主人公のバックグラウンドや神様とのエピソードがやや薄い印象だったので、今後はドラマづくりを意識してみてください。次回作も楽しみにしております。
タカヒロ先生講評
どこか緩い世界観が好きです。主人公と神様の関係性も微笑ましくて、心地よい読後感でした。
絵も内容とマッチしていると思います。後はどこかワンパンチ、強いポイントがあれば言うことなしでした。
「僕一人の地球」大井ナル
あらすじ
周りの人間が宇宙人に見える大学生・今井晃。彼を悩ますその現象の答えは、彼の過去の中にあった—
編集部講評
画力にはまだまだ改善の余地がありますが、演出、構図の工夫が効いておりセンスを感じました。ストーリーが観念的で、兄弟の描き分けの分かりづらさもあって、何が起きているのか分かりづらい部分が多かったので、より具体的なエピソードを充実させて読者が理解できる作品を目指してみてください。
タカヒロ先生講評
訴えたいテーマが何なのか良く伝わってきて、決意する主人公の表情も加わって、読んだ後の気持ちよさは最高でした。
表情のつけ方が上手なので絵がさらに磨かれていくと採点でも満点出ると思います。
「REPLICA, FAKE, IMITATION」空本雪
あらすじ
一冊の小説に感銘を受け、図書室に通い始めた粉川。図書委員の千葉と話すうちに、自分でも小説を書いてみようと思い立つが…。
編集部講評
映画を見ているようなコマ送りの演出に引き込まれました。顔アップの大ゴマも迫力があり、地力の高さを感じます。ただ既存作家の影響を色濃く感じるため、今の流行を取り入れつつも、ご自身のオリジナリティあふれる作品が描けるように頑張ってください。
タカヒロ先生講評
ヒロインが可愛くて、ラストはニヤリとしました。
影響を受けている先生の色が前面に出ているのが惜しいです。作者の個性が見たかったです。再現度の高さは天晴れなのですが。
「crumble」sni
あらすじ
ある死体を前にコーヒーを煎れる青年。コーヒーを嗜みながらどうしてこうなったかを紐解いていくのだが…!?
編集部講評
視点の新しさが良かったです。物語としても驚きが用意されており、読後感を抜けばしっかりと楽しい漫画として仕上がっていました。
欲を言えば、ストーリーの流れなどはある意味ベタなので、そこでも新しい読み味を作れると良かったと思います。
タカヒロ先生講評
絵柄や話運びが独特で味がありました。コマ割りなども見やすくて丁寧で、センスを感じます。
この雰囲気を大切にしつつ、ストーリーに面白みがあれば良いなと思いました。
- 「プルアップ」雉森
- 「創造衝動」しろもけい
- 「クトゥルーマン」木錠ケイ
- 「ヒューマンリング」黒田椿
- 「カナン」伊藤弄月
- 「言霊除霊師ロンパちゃん」仲臣結人
- 「ヒョウガと夜と」原田海渡
- 「VINYL AGE」金井直登
- 「四つ葉のレプリカ」内猫さかな
- 「ジャスティスファンタジー〜迫りくる崩壊の刻〜」綿貫幹太
キャラの心情やドラマにフォーカスした作品が多く、丁寧に描けている作品が多かったです。
作家の興味や悩みを投影したからでしょうか、地に足がつきリアリティを感じるものが多かったです。
『No.2』は心情描写の丁寧さから突拍子もない飛躍を伴いつつ爽やかなオチに繋げる力量を評価しました。
『ドキドキヌプヌプメモリアルはさよなら』はタイトルとは正反対のストレートなラブコメを丁寧に描けていました。
表情豊かなキャラクターも高く評価します。
沢山の才能に触れる事が出来て、私自身とても良い刺激になりました。
選考をしていて改めてよく分かったのですが、キャラクターの表情ひとつひとつがよく立っていると、それは目を惹きます、面白い漫画になりますね。
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