すでに脳内試着済。無類の少年ジャンプ+愛読者、オモコロライター・かまどが「Tシャツにしたい1ページ」

「少年ジャンプ+」に掲載されている連載作品(※)は、好きな1ページをTシャツにプリントして購入することができます。そこでマンガ好きな4組の著名人に「Tシャツにしたい1ページ」をセレクトいただき、Tシャツを作ってみました。ページを選んだ理由とともに、ご自身のマンガ遍歴や、好きな作品についてもお話をおうかがいします。
最後に登場いただくのはWEBメディア「オモコロ」でライターを務めるかまどさん。365日、いつでもマンガを読み続けている根っからのマンガ好きが選ぶ1ページと好きな作品から、かまどさんの人生哲学がみえてきました。

※2017年12月4日以降に「週刊少年ジャンプ」または「少年ジャンプ+」で公開された話のみ。また、対象期間内の公開話でも一部対象外となっている作品あり。

オモコロライター

かまど

(株)バーグハンバーグバーグ所属のライター。「オモコロブロス」編集長。

 

ずっと試していたけど、Tシャツには『MAD』が一番合う

僕、今日は取材ではなく試着だと思って来てまして。

――と言いますと?

実はこのTシャツ化機能、以前から「あ、このマンガはいけそうだな」とか「このコマはTシャツ映えしないな」とか言いながら密かに試していたんです。なので、今日の取材を機にTシャツの出来栄えとか着心地を確認させてもらおうという邪な気持ちでお伺いしました。なかでも『MAD』(大鳥雄介、集英社)はかなり合うと思って、ひとりでサンプル画面を見ては「やっぱりいいな」とか喜んでました。ただ、実際に作ったことはなく……本当に気に入ってるなら買っとけって話ですけど。

――では念願の『MAD』Tシャツというわけですね。着用しての感想をお聞かせください。

めっちゃいいです! 正直言って、どんな素材でどんな仕上がりになるか不安もあったんですけど、大満足!個人的に、吹き出しや効果音があるいかにもマンガっぽいものより、迫力ある一枚絵のほうが Tシャツ映えすると思ったんですよね。『MAD』は映画のワンシーンみたいな絵が多いので一番Tシャツに合いそうだなと思っていたんですが、予想通りでした。

 

 

──気に入ってもらえてよかったです。

色んな作品で試している時に感じたのは、Tシャツの色によって映えるページが変わるってことですね。たとえば黒のTシャツに黒い背景のコマを合わせようとしても、「同じ黒」とはいかない時がある。トーンが違うわけです。そこは注意ですね。

 

『MAD』(©大鳥雄介/集英社)
『MAD』(©大鳥雄介/集英社)

 

──今回選ばれた『MAD』は連載当初から注目されていたとか?

そもそも、大鳥先生が『MAD』の前に描かれていた読切の『キング』(大鳥雄介、集英社)を読んだ時点で「この人はすごい作品を世に出すだろうな」と期待していました。セリフも少ないのに、センスのいい洋画を1本観たような読後感で。「少年ジャンプ+」で読切作品を追っていると、いずれヒット作を生み出すことを予感させるような作家さんを何人かお見かけするんですが、そのうちのひとりが『MAD』を描かれていて「やっぱりな」と。

──『MAD』は連載を重ねるごとに注目が集まっていますよね。

けっこう硬派な作風なのにジワジワ注目が集まってるのを見ると、作品としての地力が感じられますよね。ド派手なストーリーと同時に、それを突き放すような退廃的な空気とか乾いたユーモアに満ちてる作品じゃないですか。「映画好きが勧める名作映画」みたいなカッコいい味わいは、本当に唯一無二だと思います。「少年ジャンプ+」を毎日追いかけて読んでいると、1週間に1回くらいはこの世界に戻ってきたくなる、ちょうどいい温度感なんです。

 

「MAD」 作品を読む

 

──『MAD』のほかに、『ダンダダン』(龍幸伸、集英社)や『こわいやさん』(カメントツ、集英社)も挙げられていました。

『ダンダダン』の龍先生もまさに、「この人は絶対ウケるぞ」と思っていたらやはり大人気になった先生です。選んだのは「アブダクション」のページ。「少年ジャンプ+」のTシャツ機能には月間売上枚数のランキングがあって、まさにこのコマがランクインしていたんですよね。それを見て、その手があったかと。だからこのセレクトは僕のアイディアではなく、先人たちの知恵です(笑)。

 

『ダンダダン』(©龍幸伸/集英社)
『ダンダダン』(©龍幸伸/集英社)

 

──龍先生の作品も、以前からお好きだったんですか。

そうですね。読切の『山田キキ一発』(龍幸伸、集英社)がすごかったな~。僕は読者を楽しませようというサービス精神のなかに、尖っているというか、その人のフェティシズムのようなものが見える作品が好きなんです。龍先生は『山田キキ一発』も『ダンダダン』も王道っぽさがありつつ、たぶんウルトラ怪獣なんかがお好きなんでしょうけど、クリーチャーのデザインやアクションのキレにそれを感じられてすごく好きです。

 

 

「ダンダダン」 作品を読む

 

――『こわいやさん』のカメントツさんは、かまどさんにとってオモコロライターの先輩ですね。

はい。インターネットで面白いものを見始めた時に最前線で活躍されていた方なので、先輩というより憧れの存在です。
カメントツさんは商業作家になる前、オモコロの時代からそうですが、読者を楽しませる方策を滅茶苦茶多く持っているし、そのカードを臆面もなく切っていく人という印象を持っています。『こわいやさん』も第1話からそのサービス精神を感じられて、もう身を全部委ねて読んでいますね。まだ連載は始まったばかりですが、「Tシャツのために作ったんじゃ……?」と感じるような一枚絵があったので選びました。

 

『こわいやさん』(©カメントツ/集英社)
『こわいやさん』(©カメントツ/集英社)

 

 

「こわいやさん」 作品を読む

エースの火拳を模写するだけで数週間かかり

――ここまでの話を伺う限り、少しグロいとか、人によっては「ウッ」となるような作品や絵がお好きなのかなと感じましたが、いかがでしょう?

そんなこともないですよ。グロが嫌いというわけではありませんが、基本的には「画力がすごい作品」に惹かれます。描き込まれたコマを見ると圧倒されるし、マンガ家さんへの畏れを感じますね。

──画力に惹かれることになった、特別な作品はありますか?

あらゆる作品に惹かれてきましたが、ひとつだけ選ぶなら『ONE PIECE』(尾田栄一郎、集英社)の18巻かな。エースが出てくるあたりです。小学校6年生くらいの頃に初めて自分でお金を出して買ったコミックスでした。嬉しくって、エースが火拳で何隻もの船を一撃で燃やし尽くす見開きを模写したんですよ。

 

『ONE PIECE』(©尾田栄一郎/集英社)
『ONE PIECE』(©尾田栄一郎/集英社)

 

その見開きを模写するだけで何週間もかかって。その時に「これまで当たり前に読んでいたけど、マンガ家ってすごいことやってるんだ」と理解しました。それからは描き込みとか、セリフの配置や入れ方なんかも気にするようになり、もうマンガはきちんと正座して読むような気持ちで触れています。

──それまでもマンガを読まれていたでしょうが、最初に触れたのは何か覚えていますか?

「月刊コロコロコミック」(小学館)や「コミックボンボン」(講談社)の作品になるはず……子供のころ読んだマンガで一番記憶に残っているのはボンボンの『サイボーグクロちゃん』(横内なおき、講談社)ですね。幼馴染と単行本の巻を分けて買ったりしていて。その子らと埃っぽい小屋に忍び込んで、同じ本を開いて一緒に覗き込むように読んだのが、マンガを読むことの原体験です。僕にとってマンガはひとりで読むものではなくて、友達と一緒に楽しむものなのかもしれません。

──それは今も続いているでしょうか? たとえばオモコロのメンバーとマンガの話を頻繁にしたり?

いつもしてます。僕だけじゃなく、みんなで。こないだ『Thisコミュニケーション』(六内円栄、集英社)が「少年ジャンプ+」で無料で読めた期間なんかは、同僚のギャラクシーっていう50代のおじさんや、ARuFaさんに「今のうちに読んでくれ!」と勧めました。あとは『サチ録~サチの黙示録~』(茶んた、集英社)が好きな人も多くて、連載が終わった時はみんなで「終わっちゃった~」と慰め合ったりしてました。

 

『さよなら絵梨』で編集という仕事に自信を持てるように

──かなりの数を読まれていて難しそうですが、好きなマンガを3つ挙げるとしたら?

挙げたいものが多過ぎてマジで3つに絞れませんが、一番は『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博、集英社)です。これはもうしょうがない。魅力をあげたらキリがないんですが、なかでも僕はこの作品のハッタリと理屈のバランスがすごく好きなんです。『NARUTO -ナルト-』(岸本斉史、集英社)のチャクラもそうですけど『HUNTER×HUNTER』(以降『ハンター』)のオーラみたいなハッタリや嘘、ケレン味のあるフィクションを浴びたくてマンガやアニメを見ているところがあります。そこにきちんと理屈を通してくれている作品は没頭してしまう。

なかでも『ハンター』の組み立ては突出していて、もはや現実から地続きに感じることさえあります。もしかして自分も水見式をやったら水が溢れるんじゃないか?って。そういうフィクションの強度は、やっぱり『ハンター』が段違いです。

──そんな『HUNTER×HUNTER』のページから、1枚Tシャツにするなら?

1枚? 難しいなあ……若い時のネテロが新世界に挑戦して「ここはでかすぎる」とドン引きしてる見開きは、Tシャツで大きく見てみたいですね。はじめて読んだ時、書き込みの量にビビりましたもん。でも扉絵もいいの多いしなあ……あとたぶん誰も覚えていませんが、選挙編でイルミが「キル…オレに隠している事があるね?」ってキルアに詰め寄る時に、イルミが手をこう(右手を顎に、左手を腰に)置いているシーンがあるんですけど、その時のスタイルが大好きなんですよ! ゴトーも好きなので、ヒソカ戦のコインを飛ばしてるところもありだなあ。

選挙編でレオリオがジンをぶん殴るシーンがありますけど、それを見て聴衆がワッと盛り上がるじゃないですか。その端っこに「にひー」って妙なポーズで笑ってる奴がいて。そいつもすごい好きなんです。

 

 

──細かいことを覚え過ぎでは……。

ああいうのが好きなんですよ!(笑)。自分でページを選べるとなると、そういう自分しか好きじゃないだろってシーンを選べるのがいいですよね。ウェルフィンが一気に老け込むシーンとか、たぶん公式では出ないじゃないですか。

──『HUNTER×HUNTER』の話で盛り上がりすぎました。ほかに好きな2作は?

『鋼の錬金術師』(荒川弘、スクウェア・エニックス)と……あとは、今だと『さよなら絵梨』(藤本タツキ、集英社)です。特に、『さよなら絵梨』は、いま仕事をするうえで精神的支柱になっている作品です。ライター、特にオモコロみたいなメディアでWebライターをしている以上、何か面白いことを文字にしてみなさんに伝えようとするのが仕事になります。でも、そんな編集の仕事に自信が持てない時期もあって。みなさんに読みやすいように編集しているうちに、もともとあった面白さが失われているんじゃないかという不安とか、どうやったって生のライブ感には敵わないのに、それを文字に落とし込まなきゃいけないやるせなさとかを感じてました。「僕がやっている仕事は、面白いものをちょっとずつつまらなくしているだけだ」という諦めのような気持ちすら持ってましたね。

 

 

──同じライターとしてわかる気がします。『さよなら絵梨』は映画制作を扱った読切作品ですが、どういう風に読まれたのでしょうか?

個人的に、この作品は映画製作だけでなく、人間を編集することまで描いているマンガだと捉えています。作中、編集のスキルを「人をどんな風に思い出すか自分で決める力」という言い方をしていて、それがすごく気に入ったんです。それ以来、読みやすく編集したり、分かりやすいテキストを書いている時も「僕は、この記事に登場している人たちを、こういう風に思い出してほしいんだ」と考えて、もう一踏ん張りできるようになりました。自分の仕事も捨てたもんじゃないなと自信が持てたので、いま好きなマンガベスト3を挙げるなら『さよなら絵梨』は入りますね。

──ちなみにとある記事では「『ピンポン』(松本大洋、小学館)がマンガで一番好き」と書かれていました。

そうだ『ピンポン』があった! あ、今すごく「ピンポン」読みて~(笑)。あの作品は「絵だけでそこまで表現できるんだ!」と驚かされるんですよね。『ハイキュー!!』(古舘春一、集英社)とかもそうでしたけど。

 

「少年ジャンプ+」にいけば毎日何か楽しいことがある

──最近はどれくらいマンガを読まれていますか?

数えたことないのでわからないけど、毎日読んでいます。移動中は当然で、風呂の中でも寝る前も。いつどんなときも読めるようにしたいので、ぼくは圧倒的に電子派です。奥さんはアナログ派なので家には本もあります。結果、夫婦で愛読している『ONE PIECE』の場合、本と電子書籍の両方がうちにある状態になっています。

紙こそ至高!とされる風潮がありますけど、スマホで読むからこその感動もあると思っていて。ページ構成なんかがスマホで読むのに最適化されている作品に出会うと、スマホでインターネットの面白いものにアクセスできるようになった時のワクワクを思い出すので、そんなこだわりもあってスマホで読んでいます。

──そんなスタイルだから、これほどいろんなマンガを読めるんですね。

実はそんなに量は読んでいなくて。ずっと同じものを読み返しているんです。さっきポロっと名前を出しちゃったので、今も『Thisコミュニケーション』をすごく読み返したくなってるし。浅く広くよりは狭く深く、という読み方で、あまり仕事にはつながらないんです(笑)。「あのマンガ好きだったな」って読み返す本でスマホがパンパンです。

──ここまでいくつも連載作の名前が出てきましたが、かまどさん、「少年ジャンプ+」を好き過ぎませんか?

大好きですよ。「少年ジャンプ+」ってアクセスすると毎日何か楽しいことがあるんです。大人になると「月曜日はジャンプが発売される」とか「水曜日にあのテレビ番組がある」みたいな、「1週間、これを楽しみに生きる」みたいなものがなくなってくるじゃないですか。

僕にとって、「少年ジャンプ+」はそれを毎日用意してくれている場所なんです。だからほとんどの連載作品を読んでいます。もちろん「週刊少年ジャンプ」も好きで定期購読していますけど、読んでる作品数で言えば「少年ジャンプ+」ですね。

 

 

──そんな「少年ジャンプ+」好きなかまどさんに伺いますが、ご自身でもチェックされているというジャンプラTシャツの月間売上ランキング。これを見て、どんなことを思われますか?

初期は「週刊少年ジャンプ」の作品が多かったはずですが、最近は「少年ジャンプ+」の作品が増えましたよね。あと休載イラスト(編注・連載作品の休載時に掲載されるイラストのこと)のランクインが多くなったのも最近の傾向では。

休載時に「本編の代わりにイラストを用意したので、これをTシャツにしてください」という試みをしたのは、僕が記憶している限り『放課後ひみつ倶楽部』(福島鉄平、集英社)が最初だったんじゃないかな。あれはすごく嬉しかったです。読者の勝手な都合だけど、休載ってどうしてもガッカリしちゃうじゃないですか。その時に「これをTシャツにしていいよ」って遊び心を見せてくれるとガッカリなんて滅相もないし、「ゆっくり休んでください」と思えます。休載すら楽しみにできるようになった、すごく好きな試みです。作者のみなさんにとっては一枚のイラストでも大変なことだとは思うのですが、読者の勝手な気持ちとして、もっと流行ってほしいと思ってます。

 

 

──このTシャツ化機能について改善してほしいことはありますか?

アオリ文のON/OFFができるようになってほしいのと、トリミング機能も欲しいです。あと前面全体ではなく、胸元にワンポイントだけプリントするパターンとかもあると嬉しいかな。

──最後までガチですね。それでは最後に伺いますが、今後は「少年ジャンプ+」作品でTシャツを作ろうと思いますか?

はい、めっちゃ思います。際限なく作っちゃいそうで怖いですけど(笑)。

 

 

 

取材・執筆:はるのおと 撮影:飯本貴子 編集:春田知子(ツドイ)

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※2017年12月4日以降に「週刊少年ジャンプ」または「少年ジャンプ+」で公開された話のみ。また、対象期間内の公開話でも一部対象外となっている作品あり。

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