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【第8回】まるでトリコの旅! 最後の晩餐に描かれた料理を食べる

グルメというものがある。美味しいものなどを食べる食通のこと。誰もがマズいものと、美味しいものならば、美味しいものを食べたいと思う。人はいつだってグルメを求めるのだ。


では、何が美味しいのだろうか。そのヒントはキリスト教の新約聖書にある「最後の晩餐」にある。キリストが処刑される前の最後の食事。最後の日に食べるということは、よっぽど美味しいはずなのだ。ということで、その食事を求めて旅に出ることにした。


トリコに憧れて

「トリコ」というマンガがある。2008年から2016年まで週刊少年ジャンプで連載された島袋光年著の名作だ。美食屋のトリコが美味しい食材を求めて世界中を旅するグルメマンガ。リーガルマンモスの「ジュエルミート」や、深海の珍味と呼ばれる「フグ鯨」など現実世界にはない美味しそうな食材が多々出てくる。


めちゃくちゃ面白いです!


トリコの魅力は料理が美味しそうというのと、その食材を求めて旅するということ。山にも行くし、海にも行くし、南極みたいなところにも行く。食材のためならどこへでも出かけ、目的の食材に出会う道中でも、実に美味しそうな食材を採っては食べている。


美味しそうなのです!


そこで私も最高の食材を求めて旅に出ようと思う。最大の目標は「最後の晩餐」でキリストが食したものだ。処刑される前の最後の食事で食べたもの。絶対に美味しいと思うのだ。ぜひ私も食べてみたい。そう思い、私は南米に飛んだ。


ペルーのアマゾン川にやってきました!


最後の晩餐の料理

最後の晩餐でキリストが食した食材を求めて、南米ペルーにやってきた。最後の晩餐はレオナルド・ダ・ヴィンチが描いたイタリア・ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院のものが有名だろう。


ダ・ヴィンチが描いた「最後の晩餐」


しかし、最後の晩餐はいろいろな人が描いている。今回食べたいと思ったのは、クスコカテドラルにある最後の晩餐の料理だ。他の最後の晩餐では魚やヤギなどが描かれているが、クスコの最後の晩餐には「クイ」が描かれている。


クスコカテドラルの、


最後の晩餐


これがクイです!


ちなみにクスコカテドラルの「最後の晩餐」は撮影禁止。上記は別の場所で撮影したもので、本当はもっと大きく、厳かな感じで描かれている。そのテーブルの中央に並んでいるのが、日本では聞きなれない「クイ」なのだ。動物ということはわかる。それを求めてペルーにやってきたのだ。


まずはペルーのアマゾンを探索します!


メニュー1:ワニとピラニア

まずはアマゾンの玄関口と呼ばれるペルーの「イキトス」という街にきた。陸路でこの街に来ることは不可能で、「トリコ」で言えば、グルメ界のような場所だ、たぶん。ここにはこの世の全てが集まると言われる市場があるのだ。


これがその市場です!


確かになんでもあります!!!


肉、魚、野菜、日用品など確かになんでも売っていた。日本では見慣れない食材も多い。ただクイはないようだった。しかし、変わりにワニやピラニアなどが食材として売られている。美味しいのかもしれない。


ということで、獲りに行きます!


クイが一番の目標ではあるが、ワニやピラニアがたくさん並んでいたので、ぜひ食べたいと思った。そこで市場で買うのではなく、アマゾン川に獲りに向かった。ピラニアもワニもアマゾン川にいるのだ。トリコのように自分で獲りたいのだ。


アマゾン川でピラニアを!


失敗!


夜のアマゾン川ではワニを!


失敗!


アマゾンのジャングルに行き、食材の確保を本気で狙ったけれど、ピラニアは小さいのしか獲れないし、ワニに至っては見つけることすらできなかった。アマゾンは厳しいのだ。最高の食材への道は厳しい。ただ安心してほしい。全て金で解決する。


メニュー1:ワニ(結局、市場でゲット!)


焼いてあります!


小さなワニをアリゲーターと言い、大きなワニをクロコダイルと言う。現地はスペイン語なので自信がないのだけれど、そう言っている気がする。そして、これはクロコダイルだ。クロコダイルをただ焼いただけのものを食すのだ。


食べる!!!


すごい、すごすぎる。美味しいとかいう話ではない。皮と身の間にゼラチンのような1センチを超える脂の層があり、まるで寒天を食べているよう食感だった。日本でもワニは食べられるけれど、ここまでワイルドなものには出会ったことがない。口の中にワイルドが広がる。


メニュー2:ピラニア(同じく市場でゲット!)


すごい歯!


よくこんなのがいる川で泳いだな、と思うような歯だった。ただ産卵期以外は攻撃してこないと言っている気がする。スペイン語なので自信はないが、そう言っている気がする。歯が鋭くトリコの世界に出てきそうは魚だ。


食べる!!!


白身だ、すごく白身だ。ワイルドだ。淡白ではあるが、どこかワイルドが残っている。臭みと言っても問題ないと思うけれど、ワイルドと言っておきたい。好き嫌いは分かれるだろう。私が考えるフルコースには入らない。キリストも同じ考えなのだろう。だから彼はクイを選んだのだ。


ということでクイを求めてクスコに移動しました!


メニュー3:クイ

イキトスではクイを見つけることはできなかった。やはり本場クスコに行かなければならないのだろう。クスコは標高が高く高山病になるので、本当は行きたくなかったけれど、クイのためだ。クスコへとやってきてしまった。


そして、クスコ中心地から乗合タクシーに乗り、


クスコの山奥を目指します!


最後の晩餐に描かれたクイは、クスコ中心地から車で1時間ほどの「ラマイ」という村が有名だそうだ。ちなみに私の着ているのはこのあたりの民族衣装。さらにちなみにクスコは「マチュピチュ」の玄関口となる街だ。ここに来た観光客は全員マチュピチュに行く。ただ私はマチュピチュに行かずに、ラマイを目指した。


マチュピチュには行きません!


そして、よく分からない街に来てしまった、、、


ラマイで降ろして、と乗合タクシーの運転手に言っていたが、私のスペイン語は全く伝わっておらず、どこか分からないところで降ろされた。おそらく隣町だ。雨が降ったりやんだりしている。仕方なくバイクみたいなタクシーを捕まえて、ラマイを目指した。


バイクみたいな、


タクシーに乗ってラマイを目指す!


クイはキリスト、つまり神が食した最後の料理だ。トリコではGODという最高の食材を探し求めている。クイはある意味、GODなのではないだろうか。だってキリストが最後の晩餐で食べた、しかもメインディッシュなのだから。


ということで、クイの街「ラマイ」に到着!


GODのメインディッシュ

このあたりの村は一村一品運動を行っており、ラマイは「クイ」がその一品だ。クイが日常的に飼育され、食べられているのだ。村の入り口には「クイ」のオブジェもある。かわいくてGOD感はなかった。むしろファンタジー感がある。


地元の方にクイを見せてもらいました!


これがクイです!!!


クイは日本では「モルモット」と呼ばれているものだ。ペルーでは日常的に食べる習慣がある。スーパーの肉売り場で売っていることもあるらしい。ただそのクイ(モルモット)の本場は「ラマイ」なのだ。キリストはこのクイを食べたのだ。


出荷される直前の、


クイ!


クイは3、4年ほど飼育され食材になる。ノッキングされたのち(ノッキングについてはトリコを読んでください)、皮をはぎ、口のあたりを割く。水で膨れているのか、ブヨンブヨンになっている。そして、焼かれるのだ。


焼かれます!


お腹に香草を詰め込み焼く。その香草がなんなのかは、スペイン語だったためもちろん分からない。この分からなさが、トリコの世界の食材みたいで謎に満ちていて面白い。白かったクイは茶色くなっている。これをキリストは最後の晩餐で食べたのだ。


これが、


これです!


食べようではないか、キリストが最後に食べた料理を。料理の仕方もおそらく最後の晩餐と一緒だ。私は手を合わせた。すべての食材に感謝を込めて…いただきます!!


食べます!


かじりつく!


美味しい!!!


皮と身の間の甘い脂が適度な量でとろけている。香草のおかげだろう、臭みはない。香ばしい皮と甘い脂、柔らかい身が口の中で弾ける。彼のフルコースのメインディッシュはこれだったのだ。キリストがこれを最後に食べたのがわかる気がした。


食べやすく切ってもらった!


美味しく食べました!


トリコの旅が面白い!

トリコに憧れていた。美味しい食材を探すという目的がわかりやすく、しかも世界観に夢がある。その世界は現実世界にはないかと思っていたけれど、南米ペルーがまさにそれだった。クイという日本ではあまり食べられない食材を、かなり苦労して手に入れることがきた。クイの街「ラマイ」という場所を聞き出すのに2日ほどかかっている。冒険のゴールに美味しいもの、最高ではないか。


原種に近いトウモロコシも美味しかった!


トリコ 全43巻 好評発売中!


地主恵亮(じぬしけいすけ)
1985年福岡生まれ。基本的には運だけで生きているが取材日はだいたい雨になる。
2014年より東京農業大学非常勤講師。著書に「妄想彼女」(鉄人社)、「インスタントリア充」(扶桑社)がある。
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