少年ジャンプ+に受賞作掲載
「チャンマスと勇者ちゃん」七月冬至
あらすじ
密かに互いに話す機会を探していた2人の教室に謎の生物が襲来。これはピンチか、あるいはチャンスか…!?
編集部講評
好感度の高いキャラクターを立体的に描写することができていました。やや会話が冗長に感じられるシーンもありましたが、バケモノと生徒たちの軽妙なやりとり等に言葉選びのセンスを感じます。これからもインプットとアウトプットを繰り返しながら、表現の幅をどんどん広げていってください。次回作にも期待しています。
春原ロビンソン先生講評
「勇者ちゃん良いな」と言っているとき肩に置いていたり、モブ含めた全員の座り方に個性があったり。情報ではなくちゃんとキャラクターとしてそこに存在していて良いと思いました。 謎の生物が出てくる展開はおもしろいのですが、この生物のキャラが強すぎて積み上げた読者の主役2人への興味を持っていってしまっているのが勿体ないです。面白いアイディアでも作品のテーマに必要なのか考えて取捨選択すると良くなると思います。
「魔人は我が魂に及び」慈富シン
あらすじ
巨大な魔人に襲われた男子高校生の目の前に、魔人と戦う少女が倒れていて…!
編集部講評
魔人のデザインや演出など、目を惹く画作りの技術が個性的で突出していました。ストーリーでも盛り上がりを作れるように、より主人公を応援できるような背景やエピソードを用意できるとさらにクライマックスが印象的になると思います。次回も期待しております。
春原ロビンソン先生講評
世界観がよくリズムもいいので流れるように読め雰囲気は好きです。
しかし全体的に説明不足で既存作品を知っていないと世界を理解できず、主人公が何に悩んでいるのかも不明瞭なので最後のセリフを読んでも「そうだね」という感想になってしまいます。連載漫画だとこういう話作りも可能ですが、それは他の話数で理由を説明し終えているからです。主人公の悩みや解決したい問題をしっかり描きましょう。
少年ジャンプ+に受賞作掲載
「COZMICコイズミ」堂真江ナオ
あらすじ
宇宙人・グレイを自分の部屋に監禁している主人公・小泉。人類を代表し、宇宙人に天誅を下そうとするが…。
編集部講評
真摯な言葉選びから作り出される、まっすぐで等身大な主人公が魅力的でした。恋愛・親子関係に対する感情描写も丁寧で、かつ宇宙人との対峙を通して描くという斬新な発想が良かったです。今後も、読みやすい画面作りを磨きつつ、さらに魅力的なキャラ・作品を生み出していってください。次回作にも期待しています。
春原ロビンソン先生講評
描きたいテーマや欲求をすごく感じられます。
しかし、まだ荒削りで散らかってしまっていて「こういう話か」と納得しかけたところで違う話がはじまり「いまこれ何の話をされているんだ?」という読み味になっています。登場するセリフやテーマはイイ物があるので読み手の事を考えて整理すればおもしろくなると思います。
「お前が死ぬとき」ボクワタシ
あらすじ
アルバイトを日々こなす少年のもとに現れたのは、自分そっくりの姿をした死神だった。
編集部講評
アングルや演出が多彩で派手なアクションを展開できていました。キャラクターの個性をより高められるように、一般的ではない言動・行動・思考を少しでも取らせてみるように考えてみて欲しいと思います。次回作も期待しております。
春原ロビンソン先生講評
おもしろかったです。
絵も構図もカッコよく、背景も最初の部屋の汚れ方や置いてあるゴミにちゃんと意味があり細かいとこまで気を使えてます。
「海賊王におれはなれない」というセリフもただのインパクト重視ではなくテーマに合っていて良かったです。ボクは好きなので特にいう事がないです。
「チョコレートの呪い」薊瑞貴
あらすじ
完璧主義の望はプロポーズを計画していたがルーティンのチョコが切れていた事に気付き買い求めるのだが…!?
編集部講評
30Pと短いページ数の中で、キャラクターの魅力を描きつつ、主人公の感情の浮き沈みや物語をしっかり完結まで描けている点が評価されました。次回作には、展開の驚きやドラマの深さなどより多くの読者に刺さるものを期待したいです。
春原ロビンソン先生講評
テンポ良く、テーマもわかりやすく読みやすかったです。最後のコマかなり好きです。
しかし田角さんの「いつも」がセリフ情報でしか出てこないので、チョコなし田角さんしか見たことの無い読者には面白さが伝わりにくいです。ミスをしても「あの田角さんがミスを」にならずミスをするんだろうなと思ったらミスをする状態になってしまっているので勿体ないです。理想のプロポーズシーンを見せたあとで現在のプロポーズシーンを見せるところはかなりグッときました。画風も個人的に好きです。
「レッドアイ」足丘乱魚
あらすじ
発症すると目が赤く染まり、人を食らうとして忌み嫌われている赫眼病。主人公のユウは感染しつつも、隔離期間を経て妹のルナと暮らしていたが…。
編集部講評
赤い目を持つ人間という既視感のある設定ながら、様々な立ち位置のキャラを出して人間関係を広げ、兄妹のドラマにきっちりと落としているところに好感を持てました。最後の展開に驚きを用意しているところも良かったです。ただ悪役の描き方がテンプレに収まったのがやや惜しく、かつ苦みのある読後感ではあったので、次回はより読む人に満足してもらえるような読み味を意識してみましょう。期待しております。
春原ロビンソン先生講評
構図やコマ割りも良く、世界観にあった画面作りで好きです。
しかし赫眼が恐れられてる理由がふんわりとした説明ページしかなく、発症している兄も普通に暮らしているので、どの程度の問題なのかが伝わりにくいです。
主軸も発症した兄の物語なのか、兄を信じられなかった妹の物語なのかまとまりきれてないので整理するとよくなると思います。
「JINGLE HELL!」沙々木瑛斗
あらすじ
犯罪者に制裁を与えているブラックサンタ。ある日、少女・レーナに正体を見られてしまい…
編集部講評
表情・アクションなど動きのある絵に迫力があり、子どもとのやりとりも可愛く、好感度の高いお話でした。一方で、全体的にベタにまとまってしまっており、次回作はセリフや演出などにご自身のならではのものを発揮できると、次のステージに一歩近づくことができると思います。これからも頑張ってください。
春原ロビンソン先生講評
キャラデザインや仕草、世界観などとてもカッコいいです。
キャラの願いや悩みなどわかりやすく描けていて良いと思います。
しかし正体を知った人を殺さないといけない主人公がプレゼントを配ったり、序盤は強く描かれていた主人公が終盤では父親相手に瀕死になったりと、設定がその場の雰囲気に流されて変化してしまっています。その辺りに説得力を与えるとさらに完成度があがると思います。
- 「UMA EATS-ユーマーイーツ-」中村サトシ
- 「朔月」沖田冬
- 「ヘルドルストーカー」まるまるも
- 「おしまい」がんばるとうふ
- 「砂漠のごちそう デザート・デザート」空路蛇行性
- 「僕と電柱のリフレイン」どうも。
- 「マナミ」柄本ともる
- 「これはママのママによるママのためのわがまま☆で、ある。」#884
- 「孤独はヒーロー」IU
- 「ロウロウ」ゲラダヒヒ
- 「化け物屋敷」杉ひろ千まき
- 「道徳のバロメッツ」伊藤綾世々時
- 「ポンコツと悪魔」彩鳥どり
- 「あなたへさようなら」平沼ヨシヒサ
個性あふれる作品が集まった回でした。一読すると癖が強そうですが、面白さもしっかりある作品が多く審査していて楽しかったです。『チャンマスと勇者ちゃん』は二人が友達になるまでとモンスター退治をシンクロさせる手法が、不思議であり面白さにも繋がっていました。『魔人は我が魂に及び』は既視感がある題材を扱いながら自分の作風に落とし込んでおり、絵の力で読ませる作品でした。
まだ「自分のおもしろい」を描いているなと思いました。それ自体は情熱があってとても素晴らしいですが、プロとしてやっていくには更にその「自分のおもしろい」を人に伝える能力が必要です。別に万人受けにしろというわけではありません。ジャンプ+はとがったマンガも歓迎の媒体なので「この癖の人に届けぇ」というマンガでも大丈夫です。ターゲットの読者を想像しながら描いていきましょう。
みなさんやりたい事や描きたい事はハッキリしていて、どれもそれ自体は面白いので、そんな能力身につけられたらボクはあっという間に置いていかれそうで怖いです。
これまでの「少年ジャンプ+漫画賞」結果発表はこちら