
「Stray Sheep」吉永陽
あらすじ
羊は家族。母の遺志を継ぐ羊飼い少年ドリーだが、ある日羊のイザベルが失踪してしまい――。
編集部講評
映像的で独自性のある画作りと、不穏さを孕んだ導入に強く引き込まれました。ラストの着地はやや軽く、主人公たちの関係性や心の変化までもう一歩踏み込めると、より読後感の強い作品になりそうです。影の付け方など仕上げにも個性がありますが、そのぶんやや視認性が損なわれている印象もありました。作家性を活かしつつ、さらに見やすい形を模索できるとよいと思います。次回作も楽しみにしております。
蔡河ケイ先生講評
サスペンスめいたストーリー展開に引き込まれました。幻想的な瞬間を切り取った印象的なシーンがいくつもあり、読者を驚かせようという意思が感じられたのもよかったです。ドリーの軽口が招いたオチも可愛くて好きです。ラストでドリーとイザベルの関係性の変化や成長があるとなおよかったので、次回作では物語の最初と最後で登場人物の何が変わったかを意識してみてください。

「バドウ」城戸孝輔
あらすじ
小柄で愚直であるがゆえに伸び悩んでいた野球少年・響 大也は、新任の体育教師・赤木場 愛から「バドミントンの才能がある」と言われ…?
編集部講評
王道の面白さが光る作品でした。バドミントンという競技についての解像度、赤木場の強キャラ感も物語をしっかり牽引できていて良かったです。一方で全ての要素を漏れなく拾いたいという意識が強いのか、少し展開が冗長に感じられる箇所もありました。心情描写についても、闘志を内に秘めるタイプの主人公なのでもう少し演出のアイデアが欲しかった印象です。本作における丁寧さはご自身の強みとして磨きつつ、今後は上記も意識していただけると良いかと思いました。次回作、楽しみにしております!
蔡河ケイ先生講評
主人公に明確なキャラクターコンセプトがあり、大也と赤木場の師弟関係を軸にした物語も王道で好ましいものでした。バドミントンの情報もしっかり盛り込まれていましたが、読切や連載序盤においてはそうした情報が多過ぎると読者から敬遠されるので、今後はもう少し登場人物同士のぶつかり合いや内面にページ数を割くとよいでしょう。

「LIVE ARCHIVE」高世峡
あらすじ
夏休み終了を目前に控え、課題が山積みの男子学生4人が作業通話を繋いでいると、肝試しの話題になり…。
編集部講評
読者を怖がらせようとする部分に工夫があってよかったです。現代ならではの仕掛けでしたし、全体的に会話のテンポもよく読みやすく感じました。怪談の設定がもう少し凝っていたり、モチーフ的なものがあると、より没入感を得られたように思います。次回作も期待しております。
蔡河ケイ先生講評
コンパクトなページ数で、読者をゾクッとさせようという企みが感じられたのがよかったです。導入部がやや長く感じてしまったのと、オチがわかりづらい点が惜しいところ。時系列を順に追わず、いきなり廃ホテルのシーンから始めて途中で回想シーンの形でホテルに足を踏み入れた経緯を描写すると入りやすくなると思います。次回は冒頭の「ツカミ」を意識してみてください。

「荒地のアベック」臼巻
あらすじ
荒廃し、文明が一度滅んだ世界。主人公・アンバーは、誘拐された相棒・マックスを取り戻すために、盗賊団のもとへ向かうが…?
編集部講評
丁寧なフリからかっこいいシーンを描いていて、力を感じました。細かいキャラクター造形も、作家性が出ていてよかったです。アクションシーンが、全体的に何をしているのか分かりづらいところがありました。読者にストレスなく読ませることを意識して描いてみてください。次回作も期待しております。
蔡河ケイ先生講評
独特の世界観と、アクションシーンでの挑戦的な構図が素晴らしかったです。「見せたい絵」がはっきりある方だと感じました。フランクと敵キャラ(ハウンドマン?)のデザインも印象的でした。ただ、読切作品としては主要人物が多く、見せ場が分散してしまっているように思います。次の作品では登場人物を絞り込み、その一人の魅力を描き切ることに注力してみて欲しいです。

「理霊」山奇矯一
あらすじ
超常の霊「理霊」が棲む湖で事件発生。穢れを消す力を手掛かりに謎を追う特殊ミステリ。
編集部講評
設定やフックの作り方、ギミックには発想の面白さがありました。絵で見て気持ちの良いシーンも作れていて、楽しく読めました。一方で、主人公の変化やドラマはやや類型的で、読者が強く応援したくなる人物像までは届いていませんでした。設定の面白さに加えて、主人公ならではの欲求や葛藤をもう一段掘り下げ、物語を通して感情が大きく動く構成を目指していただけると、さらに魅力が増すと思います。次回作も楽しみにしております。
蔡河ケイ先生講評
蝶を鍵として仕掛けのある話作りをされている点がよかったです。絵も読みやすく、コマ割りも安定感がありました。惜しかった点としては登場人物に興味を持つ前にストーリーが動き始めてしまった感があるので、次の作品ではまず主要人物に読者の興味がいくような導入部を心がけるとよいでしょう。

「とある美大生の話」兵隊ミャおむ
あらすじ
漫画家を目指して美大に入ったが、孤独な日々を過ごしていた主人公。しかしある日、同じく漫画を描く同級生と出会い…
編集部講評
漫画を描く人間の熱量が生々しく描かれており、表情やセリフ一つ一つに力を感じます。ただラストがどうしても投げやりに見えてしまい、物語を広げる力はありますが畳む力はまだ足りていないように感じました。伝えたい面白さを読者が咀嚼できる形でアウトプットできているか、常に立ち止まって考えてみましょう。次回作も期待しております!
蔡河ケイ先生講評
終盤の見開き2連発は非常に迫力がありました。主人公の抱える情念にも生々しさがあり、感情移入して読むことができました。ラストはやや乱暴なオチの付け方に感じたので、次回作では読者が「この作品を読んだ甲斐があった」と思えるラストを模索してみて欲しいです。
- 「私の形」衛門我ケイキ
- 「鬼神物語」石狩シモ
- 「フレーム越しの はばたいて」春風くまこ
- 「具現絵師フウガ」cocoro
- 「リベリオン」五連苦無


今回も沢山のご応募、誠にありがとうございました!今回は画面作りにこだわりを感じる、個性的な作品が多かったです。審査会でも皆さんの作品を楽しく拝読させていただきました。一方で設定やスト-リー、特定のシーンだけが先行している作品も多かったという印象がありました。キャラクターの作りこみ、行動原理の深掘りをもっと意識していただくことで、作品の個性と完成度をより高い次元で両立することができるかと思います。応募者の皆様の次回作にまた出会えることを楽しみにしています!
創作活動では描く対象への作者の情熱や欲望が非常に重要です。今回の応募作はどれも目を引く絵やシーンがふんだんにあり、「こんな場面を描きたい!」という作者の「シーンへの欲望」を感じられるものが多かったです。その一方で、「こういうキャラクターを描きたいんだ!」という「人間への欲望」が薄い作品が多いようにも感じました。その点、『バドウ』と『Stray Sheep』はバランスが取れていたように思います。また別の観点として、最近の読者はコスパやタイパを重視する人が多く、読んだページ数に応じた喜びを求められます。今後は「面白さの濃度」も意識して作品作りをしてみるとよいでしょう。
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