少年ジャンプ+に受賞作掲載

「人斬り与四郎のその後」柴淳芯
あらすじ
江戸後期に現れた稀代の人斬り・与四郎は、 菱形羽織の謎の侍に斬り殺される。 目覚めるとそこは、悪人同士が永遠に殺し合う地獄で──。
編集部講評
独自の解釈が加わった地獄という舞台で、宿敵を待ち続け、やがて死合いに至る構成に惹きこまれました。また、主人公と敵の双方を格高く描けており、両者の戦闘に期待感がありました。物語が一人語り中心で進むため、今後はキャラクター同士の掛け合いで話を展開することにも挑戦してほしいです。また、剣戟の構図や描き込みの迫力は活かしつつ、決着の部分など戦闘描写が分かりづらくならないよう意識してみてください。次回作も期待しております。
千葉侑生先生講評
アクションかっこいいです!人数もかなり多く出てくるのにしっかり描かれててよかったです。人の動きや構図、文字やフキダシの演出、トーンやベタの入れ方などもかっこよくてよかったです。冒頭で主人公の腕と首が飛ばされるのも引きがあってよかったです!
一方で中盤が物語が単調になってしまっているので注意です!場所も人も変わらない、また冒頭から最後までバトル続きなので画面のメリハリが感じにくいです。地獄では、おじさんとのトークや一人語りが多く、そこも少し読みづらさを感じました。キャラとキャラの掛け合いが大切なので、おじさんだけが画面にいても「画面を持たせることができるのか?」を考えて、もっと魅力的なおじさんにしたり、別のキャラにしたり、もう一人キャラを増やしたりしてみてもいいかなと思いました!
後半、バトル演出とてもよかったです!終わり方も憎い相手が感謝になり、さらに強い相手を求めて終わるのも渋くてかっこよかったです!キャラを一人で立たせるのではなく、キャラとキャラの掛け合いを意識してがんばってください!面白かったです!

「summer shadow」KEKE
あらすじ
兄・ソウイチの死を契機にバスケをやめたユウイチの前に、転校生・葵が現れる。ソウイチに恩があるという葵は、再びコートへ立つようユウイチを誘うが…?
編集部講評
世界の空気感ごと伝わってくる、気合の入った背景が魅力的でした。バスケシーンの疾走感も良く、決め絵も目を惹きました。一方で、主人公が再びバスケをするきっかけが出来事ではなく、時間経過に頼っている点は、ややアイデア不足と感じました。また、主人公がやや独りよがりな印象を受けました。ただ、等身大のキャラクターを描けるのは強みなので、今後は好感度の調整も意識してほしいです。次回作も期待しております。
千葉侑生先生講評
アナログ作画が良い味を出していてとてもかっこよかったです!トーンを使わずにひたすらに斜線とカケアミを描く気合いに脱帽です。本来トーンを貼らないと画面がしまってみえないことが多いのですが、それを感じないほど描き込まれていてよかったです。構図やコマ割りも読みやすくてよかったです。
一方で冒頭が惜しいと感じました。冒頭背景からスタートし、13ページの魅力的な演出での主人公の登場までが長く、序盤でも出てきますが小さなコマで横顔が多いので印象に残りづらいです。読者はキャラを見たいはずなのでそこを意識したらいいと思いました。もちろん背景の書き込みや魚眼演出も素晴らしく、とても見てて楽しかったです。冒頭はキャラで読者を引きつけ、後半に背景などたくさん演出を入れられたらいいなと思いました。後半、2人のバトルもすごくかっこよく、プロ顔負けの構図も演出もすごくよかったです。主人公がシュートを打つときの顔、そこから真横の構図で青空をバックに静止画で魅せる。画力、演出、最高でした。とにかく今後は魅力的なキャラを考えてほしいです!キャラの一人語りで進まず、キャラとキャラの掛け合いや一癖二癖あるキャラクター作りを意識してみてください!すごく面白かったです!

「猫になっても」山根顕人
あらすじ
とある老夫婦。ある日、おじいさんが起きると、おばあさんが猫になっていて…?
編集部講評
ばあさんが猫になる、という気になるフックからおじいさんの丁寧な感情描写と、高いレベルでドラマが作られていて面白かったです。ややおじいさんに都合の良い展開になっていた印象があったので、好感度調整も含め、バランスを意識できると、より良くなるかと思います。
千葉侑生先生講評
物語の構成とても上手でした!不穏な冒頭に始まり、内容もコミカルでとても気を引かれました。猫になりたい理由が物語の締めにくるのもきれいな終わり方でよかったです。おじいさんが今までの行動やタエに謝罪や感謝を言うのではなく「忘れないでくれ」という言葉がとてもいいなぁと感じました。セリフ回しやテンポも良く、読みやすさが山根さんの武器だと思いました。
これから頑張るところは、画力をさらに磨いてほしいです!人の描き方やバランスはとてもいいので、ペンの太さ、細さ、人物のタッチの入れ方をプロの方々を参考にしてみるのがいいかなと思いました!小物や背景なども気合の入ったページや感動シーンで盛り上がるようにもっと画力が上がるともっとよい演出になれると思います!背景が真っ白やトーンのみのところが多いので、トーンの種類を増やしたり背景の白をできるだけ埋められたらよいと思いました。コマ割りも単調で大きさも同じなことが多いので、もっと大小差をつけたらメリハリが出ていいと思います!頑張ってください!面白かったです!

「あかりの檻」三月酔
あらすじ
「大人になっても一緒にいようね」そう約束した友人の名前が思い出せないまま、乗り込んだ見知らぬエレベーター。そこではなぜか「22」の数字だけが押せなくて…
編集部講評
心象世界の中でだんだんと真実に近づいていくお話。西洋風のエレベーターやキャラの洋服、小物一つ一つにこだわりを感じ、この漫画の世界を緻密に作り上げようとする気概を感じます。希望を感じさせるラストもよかったですが、友達と向き合ってからの本番を描くことなく、それまでの葛藤を冗長に描いていた印象でもありました。人と人との向き合いをしっかり描けるような次回作に期待します。
千葉侑生先生講評
エレベーターで上に上がっていく、そのために試練をクリアしないといけないという奇妙な話で引きつけられました!各フロアが悪夢のようなそれぞれコンセンプトがありそうなところがよかったです。リボンの人のデザインや演出もよかったです。
女の子が可愛く画力がしっかりとある一方で、演出なのはわかるのですが主人公の目を隠してしまうのは読みづらさを感じました。とくに物語の大切な冒頭が少し読みづらく、三月酔さんはとくに女の子のかわいらしい顔が上手だと感じたので冒頭3ページに顔が出てこないのはもったいないと感じました。たとえばかつての友達のあかりの満面の笑顔を1ページ目に入れてそこから一気に暗いエレベーターの演出でホラー演出に落とすなど、得意分野をできるだけねじ込ませた方がいいと思いました!どうして22階なのか、どうしてエレベーターに載っているのか、どうしてツインテールなのか、伏線の張り方と回収をもっと丁寧にやってもいいと思いました!最後に振り向くあかり、本当にかわいいです!女の子の顔、プロでも通用するくらいかなり画力高いのでもっと伸ばしていってほしいです!面白かったです!

「AIKO」小林なな子
あらすじ
主人公・愛子は殺し屋として、「千人斬り」を成し遂げる。しかし彼女は、殺し屋業から足を洗いたく…?
編集部講評
長いのですが読みやすく、エンタメとして楽しめるようなキャラ・展開が作られていてよかったです。企画としてみると、既視感のある展開が続くので、何かこの作品らしさを加えられると、完成度が上がるかと思います。
千葉侑生先生講評
絵が上手でした!1ページ目の描き込まれた背景やリュック、また武器もしっかり描かれててトーンをたくさん貼ってあってとてもよかったです!作中人数もたくさんですが、全員しっかり描かれててよかったです!また、後半の戦闘シーンもかっこよく、殺し屋をいろんな殺し方をしているのも好印象でした!
ストーリー構成をもう少し捻ることができたらよいなと思いました。幼稚園ウォーズもそうですが、今は殺し屋の題材はたくさんあります。その中でも目を引くものにしなくてはならないので、「殺し屋を辞めて普通の暮らしがしたい」にプラスもうひとつアイデアがほしいなと思いました!あと敵がどんなに強い人間なのか、途中出てきた大男や長髪の人など、「以前○○を成し遂げた程の人間だぞ!?」みたいな本人でなくてもいいので補助の言葉があってもいいのかなと思いました。最初と最後で何かしらの変化も欲しいので、主人公、もしくは主人公の周りの人、誰でもいいので誰かの何かが変わっているとよいと思いました!がんばってください!丁寧に描かれてて面白かったです!

「possessed friend」もり
あらすじ
嘉美はある日、友人の禮奈の中身が別人のように変わっていることに気づく。正体を探るうちに、嘉美は次々と怪異現象に巻き込まれていき――。
編集部講評
勢いのある線で画面に迫力があり、ホラー演出も印象的でした。2人の元々の関係性や怪異現象の前フリをもう少し置けると、恐怖や感情の高まりが積み上がり、後半の展開がより大きな魅せ場として効くと思います。顔のパーツバランスも一部不安定に見えたので、安定を目指しましょう。次回作も楽しみにしております。
千葉侑生先生講評
フルアナログでトーンや背景、集中線なども描いていて気合があってよかったです!とくにトーンは影などにも使っていて種類も多く気力がすごいです!ホラー演出もとても怖くてよかったです!とくにだーれだ?の顔がすごく怖かったです!悪霊のデザインも口の中に目玉があり、倒したときにそれが散るのもよいと思いました。
一方で次がんばりたいのは画力をあげてほしいです!バトルシーンの構図やホラーの構図、いろんな構図をプロの漫画を見て勉強すればもっと魅力的になると思います!また、人物も太い線と細い線の調整をマスターして見やすいタッチにしていけたらよいと思いました。教室の背景や机の上の小物など細かい小物の描き込みは学生らしさが出ていてよかったです!次回もホラーに挑戦するのであればトーンに頼らずホラーらしい不気味なペンタッチ、斜線の練習もしてもいいかもしれません!がんばってください!怖かったです!
- 「パイロダンス」ヨシマツ
- 「行商オンザロード」緒河空間
- 「夏、首切りの仕業」水野康平
- 「宇宙の果てで待つ」木月由宇
- 「Inside the Brain」足立景
- 「サイバー・リトルヘイスト」道須南人


率直に言って、今回はものすごくレベルが高く楽しい審査会となりました。作品としての完成度にはばらつきがありましたが作家としての良いところがそれぞれはっきり出ていたのでその良い部分をさらに磨き、次は読者を意識して足りていない部分を強化できれば次のステップが見えてくると思います。またアクションで良い絵が入っている作品は多く見られましたが、そういった作品も表情にももっとこだわってもらえたらと思いました。その場面にふさわしい感情が出た表情は読者の心を捉えます。表情とアクションのどちらでも読者の目をとめることができれば記憶に残る作品になります。今回入賞した皆さん、また惜しくも入賞に至らなかった応募者の皆さんのステップアップした次作に期待しています!!
ジャンプ+漫画賞で初めて審査員をさせていただいたので、世の漫画家志望の方たちのレベルの高さにびっくりしました。読み切りとして読後感がよく、とてもみんな頑張ってるなーと感心してしまいました!全体を通してキャラが弱く、印象に残れるキャラクターを作れるかが課題だと感じました。私はキャラを作るときは『フィギュアにしたら売れるキャラ』というのを大切にしています!たくさん描いてたくさんレベルアップしていきましょう!私も負けてられません!お互い頑張りましょう!
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