少年ジャンプ+に受賞作掲載
「野球部の西くん」岩矢滉一朗
あらすじ
前の席にいる野球部の西くん。人当たりが良く、誰にでも優しい彼に、主人公・清水さんは恋してしまい…?
編集部講評
細かい心理描写が上手かったです。付き合うか・付き合わないかという微妙な関係を描き切ったところに力を感じます。欲を言えば、演出やセリフについてパンチがあるとより読みごたえがあって面白くなるかと思います。次回作も応援しております。
みかわ先生講評
作画、読みやすさ共に非常にハイレベルな読切でした!更に強度を上げるとすればキャラ造形と展開の擦り合わせです。オタクで恋愛経験がなく自己肯定感の低そうな主人公が、男の子が明言する前に自分に好意があると確信してしまう展開…異性の好意を「察する」そして先手を打って相手を「振る」のは恋愛慣れしてるキャラでないと成立しません。50P使うなら男の子が主人公に惹かれる理由もドラマチックであって欲しかったですね。最後までスルスルと読ませる高い技術、作家性があるので、次回はその辺りも練りこんでみてください!
少年ジャンプ+に受賞作掲載
「顔」白村琉ノ
あらすじ
自分の顔を嫌う妹が、ある日突然「のっぺらぼう」に。元に戻すため、家族を捨てた母の元へ向かうが…?
編集部講評
密度が高く、強固な独自性が込められた画面づくりに作家としての個性を感じます。キャラの行動・演出も思い切りよく、読み応えがありました。感情豊かにキャラが動く反面、情緒の繋がりが見えづらい、状況や展開が極端など、わかりにくい部分も見られます。今後はより読者の存在を意識しましょう。次回も期待しております。
みかわ先生講評
既に固定ファンがつきそうなほど絵作りのレベルが高いです。絵を眺めてるだけで目が嬉しくなってしまいますね!この漫画の肝はお母さんがどれだけ悪人で破天荒かだと思うのですが、私は子供だけに問題を押し付けて逃げてるお父さんの方がよっぽど悪人に感じてしまいました。まともな善人キャラが居ないので倫理観の天秤が定まらず、ファンタジー設定も不明瞭なまま、せっかくの画力から来る不気味さが伝わりきっていません。この魅力的で素晴らしい絵を活かすためにも、何をもって「悪」とするのか、人は何をしたら悪人なのか、逆に善人とは何なのか、極限まで自問自答してみてください!
「エスケープ」大橋角
あらすじ
顔よし性格よしの完璧な主人公。ある日突然、顔が奇妙な形に変化し、不気味な世界に迷い込んでしまい…
編集部講評
絵が上手く、ご自身ならではの世界観もあり、完成度の高い作品でした。原稿の隅々までこだわる真摯な姿勢はぜひこれからも大事にしてほしいです。ストーリーを綺麗に収束させていく構成力も見事でしたが、受賞作ではやや尻すぼみな印象だったので、次回作では読後感を意識してみください。期待しております!
みかわ先生講評
絵もネームも即戦力ですね!大変レベルが高く読んでて興奮しました!ですのであえてレベルの高い要求をしてしまうのですが、どんでん返しの展開に関しては夢落ちに近い、期待を裏切られた感がややありました。成立はしてるので、これでも問題はありません。ただ出だしのファンタジー的な空気感が、絵柄の好感度も相まって良すぎたのです。箱庭ミステリーで引っ張る以上落ちの強度を読者も求めてしまいますので、もう少しプロット段階で粘れたら唯一無二の読切になれたと思います。次回作が楽しみです!
「新品未開封」肋骨兄妹
あらすじ
前の席のしの田さんから目が離せない主人公。次第にその感情はエスカレートしていき…?
編集部講評
一瞬一瞬の感情を丁寧に掬って表現できていました。今後はストーリー全体を見渡すマクロな視点を強化できると、ミクロな視点の鋭さが強みとして生きてくると思います。これからもご自身の着眼点や作風を大切にしつつ、次のステップとして読み手の存在を意識して作品を作ってみてほしいです。期待しております!
みかわ先生講評
青春系かな?百合系かな?変態系かな?露悪系かな?と読み方を探ってるうちにページが終わってしまいました。「こう読んでほしい」とかなり強引に誘導してあげないと読者に意図が伝わりません。シーンの繋げ方もちょっとわかりづらく優しくないので、今は沢山ネームを描いて感覚を養って欲しいと思います。個人的にはすごく好きな作品でした。ここからすごく伸びそうな気配を感じます。しっとりした絵の雰囲気は素晴らしい武器なので、次は〇〇系と一貫して読切を仕上げてみてください!
「ゴールキーパーとは」副田暁人
あらすじ
無失点記録継続中の小学生ゴールキーパー・松野大貴。しかし本当は、彼の実力が高いわけではなくー
編集部講評
「味方が強すぎるが故に点を取られないゴールキーパー」という企画のアイデアが秀逸でした。そこから派生して生まれるキャラクター/演出の一つ一つで、しっかりギャグを作れていた印象です。今後はキャラクターの状況が初見の読者にもわかりやすく伝わるよう、シーンの選び方に一層こだわりを持てると理想的だと思います。
みかわ先生講評
嫌いじゃなさすぎて困ってます。こういうの、嫌いじゃなさすぎます。副田さんに求めることはただ一つ、タフネスであることです。今や大ヒット原作者の初受賞作(昔私の周りでひっそりと伝説になった読切です)の読み味がこんな感じだったので、是非そこに至れるよう死に物狂いで漫画を描いて欲しいです!主人公が咆哮した後はおじいちゃんで茶化さず本気で熱いシーンにして良かったと思います。一番大事なシーンの意図が読み取りづらく、そこのアクションだけは誰にでも伝わるよう丁寧に描いて欲しかったです。
「ラッタッタ」三浦憲
あらすじ
ピアノを愛している主人公は、鼠の化け物だった。警察に捕まるも、ピアノを弾きたい主人公は…?
編集部講評
コミカルなキャラと、演出力にポテンシャルを感じました。ただ、話の軸が見えないまま進むのと、展開に脈絡がないこともあり、どこをどう楽しんで読む作品なのかが見えづらかったです。分かりやすさを意識すると、より面白く・読みやすくなるかと思います。次回作も応援しております。
みかわ先生講評
ちょっとコマ運びが読みづらかったのですが、淡々としてそうで激しい熱量があり面白かったです!演奏シーンがあと5Pあるだけで読後の満足感は増すと思います。憎悪してる人間が生み出した「音楽」に魅せられてしまう複雑な感情はもっと深掘りして欲しかったです。私だったら敵サイドに音楽に憧れたきっかけのピアニストを配置しちゃうと思います。あと新人賞に言うのは野暮なのですが、主人公サイドが最後に人間を大虐殺するのはナシです。例え極悪人相手でも、ここまでやってしまったら学校に行くどころではなくなってしまいます。柔らかな優しさと激情を併せ持つ大切な作家性です。主人公たちの優しさだけは徹底的に守ってあげてください!
- 「赤い雨音」リアルヨシカタ
- 「ボクを照らす太陽」五結朱雀
- 「パラドックストライアングル」脇川圭祐
- 「人間ゴミ~馬鹿は死んでも治らないの巻~」平沼ヨシヒサ
- 「タイトルなし」丸山こーと
- 「毎日が記念日」吉永陽
今回もたくさんの個性的な候補作が集まりました。その中でも雰囲気があり、間の取り方や台詞回しで目を引く作品が多く、レベルが高かった印象です。企画自体は一見地味で、普通にどこにでもありそうな人間関係から読者の興味を引くキャラクターとドラマを短いページ数で描くのは確かな技術が必要です。この先に描かれるまだ見ぬ作品も楽しみです。逆に突き抜けたバカバカしさを描いた候補作もあり、マンガの自由さを感じました。巧みなマンガも突き抜けたマンガも読む人の心を揺さぶればそれは立派に作品として成立しています。個性を磨いたうえで、より多くの人に伝わる技術をあわせれば、多くの読者を獲得できます。応募者のみなさんの個性をより楽しめるような次回作を楽しみにしています。
最終候補6作ともちゃんと面白く、それぞれ光るものがあって、レベルの高さに驚きました!全て素晴らしかったです。また次の作品を描いてくれたら嬉しいです。新人賞の性質上、とりあえずの順位はついてしまいますが、ちょっとした気付きやアイディアで簡単にひっくり返るのが漫画なので、あまり気にせず引き続きネームを描き続けて欲しいと思います。商業誌は安定した原稿料を貰えますが、どうしても連載までに下積み期間が必要になることが多いです。今はSNSで自分の作品を手軽に公開出来ますし、出版社を介さずお金を稼ぐことも出来る時代です。皆さんの目的次第ではジャンプ+である必要はないかもれません。自分が何を描きたいのか、どうなりたいのか、それを叶える舞台は商業誌である必要があるのかを検討し、現状のお給料と貯金額、自由時間、己のメンタル、肉体的体力がどこまで耐えれるのかを模索しながら、ひたすら技術を高めてください。あなたを守ってくれるのは、あなたが身につけた技術だけです。応援しております!
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