少年ジャンプ+に受賞作掲載
「フラッシュバック」津山かもめ
あらすじ
記憶喪失の主人公と、彼女のもとへ通う少年・三ヶ島。会話を交わしながら、過去を思い出し――?
編集部講評
コマや構図、セリフなど各所にセンスを感じました。人物描写が丁寧で、感情移入しやすかったのも良かったです。終盤、もっと前向きになれる終わり方だとより読後感よくなるかと思います。これからどんどん作品を描いて、ご自身なりの作家性を見つけていってください。応援しております!
アンギャマン先生講評
導入からは予測できない意外性のある展開とシナリオ、表情豊かなキャラクターと心象表現、独特のテンポ感…と個性的な作品でした。作家性が感じられてよかったと思います。一コマにキャラとセリフを置き、一コマ一コマ会話が進んでいくのはわかりやすく、独特なテンポ感があって良いのですが、どうしても淡々とした印象だったり、ページ数が増えてしまいがちです。感情的な心象表現も上手なのに、悲しみや苦しさばかりなのが惜しく思えます。最後の記憶が蘇りすべてがつながる場面で、ポジティブなものがあればオチのコミカルさが引き立ったかなと感じました。今後はより商業的娯楽的なチューニングが必要になってくるかもしれません。応援しています!
「悪魔の口の中」九淵一真
あらすじ
完璧な女子高生・雪絵は、姉が大好きだった。二人は巷の噂になっている「悪魔の口」に突如取り込まれるが!?
編集部講評
情念を感じる、力強い原稿でした。意外性のある展開、考え抜かれた構成に好感が持てました。暗く重たいシーンが続きますが、しっかり救いへと繋げる描写力に、可能性を感じます。画力はまだまだ発展途上ですが、描けば描くだけ成長する時期なので、作品を重ねてください。期待しております。
アンギャマン先生講評
背景や書き込み、キャラクター造形や演出、シナリオ展開と、できることを全力で詰め込んだという印象の作品でした。とくに妥協なく書き込まれた背景と、演出がとてもよかったと思います。重々しく暗い展開ながら印象的な演出で惹きつける工夫をされ、最終的には明るく読後感よく仕上げたのは非常に素晴らしかったです。あまりいうことがありません。今後のご活躍を期待しています。
「RABBIT FLOWERS UFO」道夜鷹
あらすじ
アメリカで宇宙人を探し続ける捜査官・レオ。彼はある日ウサギ型の宇宙人と出会うがー!?
編集部講評
愛嬌あるキャラクターが描けており、狙いのある印象的な演出が目立った作品でした。もう少し主人公と宇宙人の関係性を丁寧に描けているとより後半が感情移入されて読んでもらえると思います。また、基礎的な画力はより鍛えられるといいですね。次回作も期待しております。
アンギャマン先生講評
ビターエンドが印象的な作品でした。作画に関しては向上の余地がありますが、大きな見せゴマや印象的なシーンを描こうという意欲が感じられて好感を持ちます。物語の起承転結のシナリオの流れや設定も非常に丁寧に作られている印象を受けました。キャラの特徴なのだとは思いますが無感情なままでの感情表現が多いように感じられたのを惜しく感じられました。重要なシーンも会話の中で明かされているのみでなく、それに対するキャラクター達の感情のぶつかりや表情やリアクションのコマがあれば、読者にとってより分かりやすく印象に残るものになると思います。その世界を必死に生きているキャラクターを人間として描ければ、シナリオの巧みさがより良くわかりやすく表れてくると思います。がんばってください!
「ガンハンド」多摩川裕也
あらすじ
右手が銃になってしまった女子高生・金引。そんな状態であっても普通の生活を望もうとする彼女だが…
編集部講評
主人公の設定を奇抜にしたことによって、グッと引き込まれる導入となっておりました。また舞台環境も相まって、主人公が抱える悩みもすんなり受け入れることができました。後半の展開は少し情報量がないように感じてしまったので、次回は勢いに任せすぎない漫画を作れるよう、頑張ってください!
アンギャマン先生講評
印象的な導入、派手な展開、思春期の葛藤などが詰まった娯楽的な作品でした。セリフに頼らない感情の表現ができているのは素晴らしい事です。人を楽しませるポイントを捉えていると感じられます。より良くしていくとすれば、キャラクターをより可愛く、よりかっこよくしたり、表情や演出によってキャラクター達の感情のギャップをよりコミカルに表現したり、設定をより単純化してさらにわかりやすくしていけば、より多くの人に楽しんでもらえるようになっていくことと思います。がんばってください!
「モラトリアムレコード」燕樹
あらすじ
改造したレコードに囲まれその日暮らしをする“先輩”と主人公。ある日突然、主人公は働くことを決意し…。
編集部講評
一コマ一コマが非常に丁寧に作られており、独特なキャラ造形にもセンスを感じます。一方、内容面では、心情の変化が急で、結末も順当なものになっており、感情移入しづらい展開になってしまっていました。構成力と心情描写を磨くことでもう一段レベルアップできると思います。次回作にも期待しております。
アンギャマン先生講評
文芸作品のような雰囲気と世界感をもった作品でした。モラトリアムの空気感を絵描きたいのだなと感じました。キャラクター達もかわいらしく見えて、意外なしたたかさや強さがあってよかったと思います。キャラクター達の思いや感情がほとんどすべて言葉で表現されているのはわかりやすく伝わりやすいのですが、キャラクター達自身にも言葉にできない気持ちの表現があればより人間らしく生き生きとしてくると思います。社会とのギャップや変わっていく過程と選択、その時の気持ちを言葉ではなくキャラクターの表情や小物、背景や群衆、光や構図で表現していけばよりよくなっていくのではないかと思いました。がんばってください!
- 「毒吐く少女」九重アキラ
- 「Two Way」五味拓真
- 「お守りにハンマー」水篠
- 「タマタマタマタマ」晴天しらす
- 「実演販売士スラッシュ朝倉」阪中博紀
- 「がぶがぶ」清田世一
- 「布団がふっとんだ」宇鶴宙
- 「ホンホンソウソウ」丸山こーと
- 「アランのカクゴ」十五征
それぞれに作家さんの個性を感じる作品が集まった良い回でした。あと少し主要キャラのエピソードを足す、一番印象に残る終盤の場面の演出やセリフにもっとこだわってみる、と少し高い視点から作品を見つめ直す目線を意識するとさらに読者の心に残る作品になると思います。次の作品も楽しみにしています。
世界観を持ってそれを漫画に落とし込もうとしている作品ばかりで読んでいてとても楽しかったです。技術的な部分はこれから経験を積んでゆけばいいだけで、その核となる部分を描くのは技術ではなく、熱意や想いといったものです。そういった根源的なものが詰まった作品の数々を審査させて頂くのは難しく、私にどれほどできたかもわかりませんが皆さんの才能の一端を感じられたのは非常に光栄です。この賞は一つのキッカケに過ぎません。漫画家として生き抜くことは簡単ではありません。それは私も受賞者の皆さんも連載作家にとっても同じ事です。よい刺激をいただきました。私もがんばります。受賞者のみなさんおめでとうございました!
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